ドイツがウクライナ支援を半減、背景に「あの事件」

 8月17日付の独フランクフルター・アルゲマイネは、「ドイツが来年の予算案に計上した対ウクライナ軍事支援は40億ユーロ(約6500億円)で、今年の約80億ユーロから半減する見込みだ」と報じた。ショルツ首相やリントナー財務相は緊縮財政を進めており、新規のウクライナ向け軍事支援要請は当分の間、認めない方針だという。

 ドイツの今年6月までのウクライナへの軍事支援額は米国に次いで第2位だ。ドイツが支援を凍結すればウクライナが困るのが必然なのに、なぜ、ドイツはこの決定を下したのだろうか。

破壊された海底パイプライン「ノルドストリーム」から噴出する天然ガスの泡(提供:Danish Defence Command/ロイター/アフロ)

 ドイツ政府は「財源が空っぽだ」と説明しているが、ある「事件」との関連が取り沙汰されている。その事件とはノルドストリーム爆破事件のことだ*1

*1The Beginning Of The End? Germany To Ban All New Ukraine Military Aid(8月18日付、ZeroHedge)。

 2022年9月下旬、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスの海底パイプライン「ノルドストリーム」4本のうち3本が破壊された。関係各国が真相究明に乗り出したが、スウェーデンとデンマークの検察当局は今年に入り、「司法管轄権がない」との理由で捜査を打ち切り、ドイツ連邦検察庁に証拠資料などを引き継いだ。

 事件は迷宮入りするかと思われていたが、ドイツ連邦検察庁は8月14日、ポーランド在住のウクライナ人(男性)に破壊行為などの容疑で逮捕状を取得した。この事件で逮捕状が出たのは初めてだ。

 容疑者はウクライナ人のダイビングインストラクター「ヴォロディーミル Z(Volodymyr Z)」。事件当時、ヨットでバルト海を航行していた疑いがあり、押収したヨットから爆薬の痕跡などが見つかったとしている。ヴォロディーミル容疑者は最近までワルシャワ近郊に潜伏していたが、既に国外逃亡しており、身柄を確保することはできなかったという。

 ドイツ政府は「今回の逮捕状の発出でウクライナとの関係が悪化することはない」としているが、「ウクライナはノルドストリーム破壊の損害を補償すべきだ」と主張する連邦議会議員もおり*2、ドイツ国内でウクライナの評判が下がることは間違いないだろう。

*2Ukraine Must Pay Germany Back For Damage From Nord Stream Bombing: Bundestag Lawmaker(8月19日付、ZeroHedge)

 米国でも14日にウォール・ストリート・ジャーナルが「ウクライナのザルジニー総司令官(当時)がウクライナの実業家から30万ドル(約4500万円)の資金を得て実施した作戦だった」と報じている。この作戦を察知した米国からの中止要請を受けてゼレンスキー氏は作戦中止に動いたが、間に合わなかったという。

 筆者は「この報道の内容はあまりにもお粗末だ」と考えている。これほど大規模な爆破工作を30万ドルの費用で実行できたとは到底思えないからだ。