予備選挙の様子(写真:Jefferee Woo/Tampa Bay Times via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ「ZUMA Press」)予備選挙の様子(写真:Jefferee Woo/Tampa Bay Times via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

 イスラエルとハマスの対立はなぜ収束しないのか。ロシアのプーチン大統領はなぜウクライナを侵攻し続けるのか──。最新の世界情勢を読み解くには、地政学、宗教、歴史、民族、経済といった「公式」に、政党という「変数」を加えることが必要だ。

「政党を見るという“ミクロの目”を持つと、世界を見るという“マクロの目”も備えることができ、その国や地域の実情が寄り立体的に見える」と語る元外交官で著述家の山中俊之氏が語るアメリカの政党について。

※この記事は、『教養としての世界の政党』(かんき出版)より「アメリカ」部分を一部抜粋・編集したものです。

誰でも大統領になるチャンスがある米国

 米国の政党には党員についての厳格な規則もありませんし、義務的な党費も党の活動をする義務も原則的にない。日本の自民党のような公認権(選挙で政党として公認を与える権限のこと)や資金を持つ強力な党執行部も存在しません。

 重要な政策については全員の意見を一致させるという、日本の政党では当たり前である「党議拘束」も原則なし。

 議院内閣制で政党や派閥が非常にかっちりしている日本人からすると「与党の党首が大統領では?」という感覚があり、「大統領候補と党首は別だ」という米国は摩訶不思議に思えるかもしれません。

 政党がとてもゆるやかな構造をもっているうえに、米国の「個人主義と自由競争」が加わると、大統領として権力を振るいたい人にとっては権力志向が非常に強くなります。

 党内では「支持基盤をどれだけ取るか!」で激しい自由競争が生まれ、政治経験のない一般市民でも、資金力や知名度さえあれば予備選挙を有利に展開できることがあります。

 まるで高校の生徒会と言ったら言い過ぎですが、素人っぽい。トランプ元大統領が当選したのは、米国の政党に内在しているこのアマチュア志向ゆえと言えるでしょう。