仕事への気持ちが切れてしまい、メンタル不調に陥った。2021年7月、休職することになった。心療内科では、「双極性障害」(昔は「躁うつ病」と呼ばれたが、近年は「双極症」とも呼ばれる)の診断をもらった。

 気持ちが落ち込む「うつ状態」、気持ちが上がってしまう「躁状態」の両方を経験した。症状がひどい時は、階段を下りられなくなったり、包丁を使えなくなったり、散財したりしてしまった。必要のない服を大量に買ってしまい、お金がなくなった。

 ただ、「双極性障害」の診断をもらったことは真理さんにとってマイナスではなかった。それまでは気分が落ち込んでも原因が分からず、対処法も分からなかったからだ。医師から「病気だから仕方ないのですよ。薬を飲んだら安定します」と言われ、メンタル不調の原因が分かって安心したという。

 心療内科で処方された薬を飲みつつ、カウンセリングにも通った。1回50分5000円で、臨床心理士が対応してくれる。真理さんは自己肯定感が低いタイプだったが、カウンセリングの中で、自分を認めてあげる方法を教わった。休職期間中は自身の病気と向き合う大切な時間となった。

 4カ月の休職期間を経て、仕事に復帰した。事務職として働いた。会社には病気のことも伝えており、親身になってくれた。仕事の調整もしてくれた。人事部や上司が真理さんの病気をよく理解してくれたこともあり、真理さんは復帰後は順調に働くことができた。

「新卒で入った会社がひどかった分、今の会社は『こんな近代的な会社があるんだ』と感動しましたし、本当に感謝しています」

 2024年6月から、人事部からの勧めもあり、総合職に復帰した。人事部に配属された。会社の規模は1000人程度である。

 社員の健康状態を把握して管理しながら、一人一人の生産性を向上させるにはどうすればよいのか。どういうチームを組めば仕事がうまく回るのか。どういう人を採用すれば、会社の成績に貢献できるのか。統計データを駆使しながら考える日々だ。

 30代前半の男性上司は「仕事は自分のためにするもの。まずは自分が納得できる仕事をしてほしい。真理さんなりのアイデアをどんどん出してほしい」と日々励ましてくれている。

「今の仕事は充実しています。1年目のことが嘘だったみたい。今の上司と出会えて本当によかったので、転職は1ミリも後悔していません。仕事ってネガティブなものじゃない。自分に合った仕事が見つかれば、仕事から達成感を得ることができます。今の仕事に悩んでいる人は、思い切って転職も考えてみてほしいですね」

 そう語る真理さんの表情は晴れ晴れとしていて、充実感にあふれていた。

セクハラを会社に訴えても取り合ってもらえず心身に不調をきたす女性は少なくない(写真はイメージです/出所:ぱくたそ)

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