有料化の流れは広がるか?高額のVIPシートも

 花火大会は経済動向にも大きく左右されます。リーマン・ショックで日本経済が大打撃を受けた2009年や、東日本大震災のあった2011年、コロナ禍に見舞われた2020〜2022年にも、大会の中止は相次ぎました。当時のニュースを見ると、主催者が寄付や協賛金を懸命に集め、規模縮小してでも実施にこぎつけた実例がたくさんあったことがわかります。

 では、今後の花火大会はどうなっていくのでしょうか。方向は1つではありませんが、「有料化」の流れは強まるかもしれません。

 帝国データバンクが2023年8月に公表した調査レポートによると、全国の主要な花火大会106大会のうち、77大会は有料観覧席を設けていました。1席の平均価格は4768円。コロナ前の2019年との比較では、約3割も値上がり。大会ごとの最高価格帯を平均すると、2019年比5割増の3万2781円になりました。

 2023年夏の段階で最も高額だったのは、小田原酒匂川花火大会(神奈川県)の「Sタイプ・ベッド席」の30万円でした。

 値上げの動きはいま、「モノ」だけでなく「サービス」に波及し、テーマパークやイベントのチケットは高額化の動きが急速に広がっています。

 夏祭りでは富裕層をターゲットに最高100万円のVIPシートが導入されるなどプレミアム化も顕著。帝国データバンクもこのレポートの中で、「無料イベントの有料化は、収益確保以外にも観覧者の位置や人数を事前に把握しやすいことから警備面でも有効といった側面があり、花火大会でも有料席の導入や拡充が相次ぐ要因となっている」と指摘しています。

 誰もが分け隔てなく手軽に楽しめたものが、経済力によって左右されていく。花火大会にもそんな未来が訪れるのでしょうか。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。