血統だけではわからない競馬の魅力
一方、オグリキャップの父・ダンシングキャップは英国での現役生活で際立った成績を残しておらず、種牡馬として日本に輸入されて以後も大きなレースに勝利する馬がほとんど出ていない、印象度の低い父馬でした。母・ホワイトナルビーには公営8戦4勝という記録が残っています。
中央の舞台ではたして勝ち続けることができるのか、期待ばかりでなく若干懐疑的な意見もありましたが、移籍初戦の「ペガサスステークス」を難なく勝つと、その後、重賞レースを6連勝、不安は大きな期待へと変わり同世代でオグリに敵う馬はいなくなりました。
オグリキャップがエリート揃いの中央の馬に勝ち続けている理由は何なのか。「強い馬が強い馬を生む」というサラブレッドの血統鉄則から考えると強さの秘密は解明できず、答えに詰まった挙句、「突然変異で誕生した馬」と結論付ける関係者も出てくるほどでした。
実は、ここが競馬の面白いところであり、魅力でもあるのですね。予想に絶対がないのと同じです。
当時、競走馬の血統に興味を抱いていた私は、オグリキャップの母ホワイトナルビーを5代遡ったところにマンノウォーという1920年前後に活躍し、米国史上最強馬といわれた怪物がいたことを見つけ、マンノウォーの再来ではないか、と雑誌のコラムに記したことがありました(少し自慢)。
公営時代のオグリは8か月の間に12レース出走し約2300万円の賞金を獲得、中央移籍後は3年間で20レースに出走し、当時としては史上最多の約8億9000万円を獲得しています。ほんとうに働き者でした。私は史上最高の馬主孝行だと思っています。