ラストランの奇跡と感動のオグリコール

1990年12月、「第35回有馬記念」を優勝で飾ったオグリキャップと武豊騎手 写真=共同通信社

 オグリキャップのラストランとなった平成2年(1990)の有馬記念に押し寄せたファンの数は、中山競馬場としては史上最高の17万7779人でした。

 勝利から遠ざかっていたオグリキャップのこのときの単勝馬券は4番人気で、勝利を期待するファンは以前ほど多くありませんでしたが、予想に反し、先頭でゴールを駆け抜けるオグリの姿にファンは大興奮!

「奇跡」といわれた勝利の瞬間、鞍上の武豊騎手(当時21歳)が左手を挙げてファンに応えていますが、フジテレビの実況は「右手」とアナウンス、見ている人の誰もが興奮状態に陥っていたのです。

 ここ数年はコロナ禍にあって入場者制限があり、東京競馬場ですら2023年の平均入場者数はおよそ3万人という数字でした。

 オグリキャップのラストランに駆け付けたファンの数がいかに衝撃的であり、17万の怒号のような「オグリ」コールが歴史に残る現象だったことがおわかりになるかと思います。

 今振り返れば、日本の競馬史上最大のブームを牽引したオグリキャップの花道としてふさわしい舞台を「競馬の神様」が設定してくれたようにも思えます。

 このときの映像はユーチューブでご覧になれますが、レース前、レース後に写されるファンの熱狂ぶりをぜひご覧いただきたいですね。

 オグリキャップの活躍した時期といえば、日本ではちょうどバブル景気に沸いていた時期と重なります。私はバブルの恩恵にあずかれなかった一人ですが、あのときオグリの単勝馬券(1000円の特券)を握りしめ、5500円となった恩恵、そしてお金では買えない興奮と感動を頂戴したのでした。

 時代は令和へと移り、オグリキャップは「ウマ娘」に転生、今また若いみなさんに親しまれています。引退から34年、オグリキャップの名は不滅です。

(編集協力:春燈社 小西眞由美)