「岸田首相は分かっていない」

──澤上さんがさわかみ投信を立ち上げたのは30年近く前ですが、当時は今以上に独立系の資産運用会社を作る理由を周囲から理解されなかったのではないですか。

澤上:それはもう、金融業界全体が国の政策遂行手段としか見られていなかったから。本来、資産運用ビジネスというのは受益者のためのものだと主張しても、大蔵省などは全く理解してくれなかったし、資産運用会社を立ち上げる際には、ものすごくいろいろな横やりが入りました。

中野:澤上さんが切り開いてくれたから、私が前の会社(セゾン投信)を立ち上げた際にはかなり改善されていたと思いますが、それでも大変でした。今回は、その時よりはやりやすくなっていて、金融庁もしっかり理解してくれています。それでも、年明けには事業をスタートできるかと思っていたところが、4月に始められるかという状況にずれ込んでいます。

澤上 篤人(さわかみ・あつと)
1947年3月28日生まれ 愛知県出身、71年から74年までスイス・キャピタル・インターナショナルにてアナリスト兼ファンドアドバイザー。その後、80年から96年までピクテ・ジャパン代表を務める。96年にさわかみ投資顧問(現 さわかみ投信)を設立し、99年には「さわかみファンド」を設定。日本における長期運用のパイオニアとして熱い支持を集めた。現在は、さわかみグループ総帥として長期投資の啓蒙活動に精を出すと同時に、「カッコ好いお金の使い方」のモデルとなるべく財団活動にも積極的に取り組んでいる。近著に『暴落ドミノ 今すぐ資産はこう守れ!』(明日香出版社)(写真:村田和聡)

澤上:岸田首相も資産運用立国を目指すというのであれば、プレーヤーを増やす必要があるわけで、そのためにはもっと認可のスピードを上げなければいけない。口だけで全然わかっていないね。

中野:入り口の閉鎖性はまだ解消されていません。一度、資産運用会社を立ち上げたことがある私がやっても、これだけ時間がかかるわけですから。

澤上:私は怒っているんですよ。とっとと作ってなぜ、もっと早く始められないのかと。