ミラノ風ドリアが価格を維持できる秘密

 商品面でも堀埜氏は改革を実施した。たとえば、看板メニュー「ミラノ風ドリア」。もとは480円だったのだが、会長の正垣氏が値下げを決定した。理由は「一番売れている商品を値下げすれば、お客様が喜んでくれる」というもの。原価がいくらだから利益をこれだけ残さなくては、などと言うセオリーはそこにはない。

「お客様が喜んでくれる」とはいえ、社長である堀埜氏としては採算が合うようにしなければならない。

値段は一瞬で変わっても、それを実現するのは大変です。いままでと同じやり方をしているだけでは原価は変わらないので、とうてい300円では出せません。それまではホワイトソースやミートソースを外部から調達していたので、それらをすべて内製化する必要がありました。

 正垣氏の思いに応えるべく堀埜氏が採った方法は、新たな工場の立ち上げだ。国内だけでなく、ホワイトソースの原料を安く仕入れるためにオーストラリアにも工場を建設した。投資が必要になるが、レストランでは珍しい「製造販売」を実現することとなり、その結果、信じられないような価格での提供を可能にしたのだ。

「製造販売業」化で店舗の客席面積を拡大

 既成概念にとらわれず思い切った決断ができるのがサイゼリヤの強みだ。それは経営陣だけではない。

 サイゼリヤでは店舗ごとにオペレーションが違い、客に喜んでもらうためならサラダを大盛りにする店舗もあったという。チェーンオペレーションの常識には反するが、堀埜氏は、それを頭から否定することなく「サイゼリヤの文化」として受け入れた。

 その上で、どうすれば品質と価格を維持できるのかを徹底的に考えたのである。前述の「製造販売業」化もそのひとつ。調理の一部を工場に任せたことで、店舗のキッチン面積を縮小できた。空いたスペースを客席に充てれば、その分、収益を生み出せるというわけだ。