(写真:SOMKID THONGDEE/Shutterstock.com)

 日本では2人に1人ががんに罹患し、男性は4人に1人、女性は6人に1人が命を落とす「死に近い病」として、いまだに恐るべき相手だ。ただ、死亡率は低下傾向が続いている*1

 その要因のひとつは、さまざまな治療法の進歩である。がん治療は外科手術、放射線治療、化学療法の3本柱が基本だ。化学療法に使われる抗がん剤は、研究開発に世界中がしのぎを削っており、新薬の登場も多い。

 そこに新たな治療法も登場した。2014年には、免疫チェックポイント阻害薬を使用し、自身の免疫を利用してがんと闘う“第4の治療法”が承認された。さらに20年6月にはBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)、21年1月にはアルミノックス治療(光免疫療法)が保険適用されて診療が開始された。BNCTとアルミノックス治療は“第5の治療法”と呼ばれている。

*1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」より

再発頭頸部がんに2つの新治療法

 第5のがん治療法といわれるBNCTとアルミノックス治療は、どちらも「再発頭頸部がん」で保険適用される。つまり、外科手術や放射線治療、化学療法などの〈標準治療〉を受けた上で、がんが再発した場合に受けられる治療法だ。「〈標準治療〉を尽くして、もう手立てがない」ではなく、次の一手が登場したとも言える。

 このうちアルミノックス治療の仕組みは、がん細胞に特異的に結合する薬剤を患者に投与し、患部にレーザー光を当てることでレーザーと反応させ、がん細胞だけを壊すというもの。対してBNCTのほうは、がん細胞に取り込まれやすいホウ素の同位体を含んだ薬を投与した後、中性子線を照射、中性子とホウ素が反応してα線という放射線の一種とリチウム粒子が発生し、2つのエネルギーによってがん細胞が破壊されるという仕組みだ。

BNCTの治療イメージ(画像提供:南東北BNCT研究センター)
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 どちらもがん細胞だけを“狙い撃ち”するのが特徴で、正常な細胞への影響が少ないため、従来の放射線治療や殺細胞性抗がん剤に比べると身体的な負担は比較的、軽くて済むという(ただし、ホウ素化合物の取り込みの程度によっては正常細胞も影響を受ける)。

 治療にかかる日数もアルミノックス治療では治療に2日、BNCTは1日。その後、約1週間の入院で経過観察をするため、短期間で終わる(事前の検査にかかる時間は除く)。