「まるで腫瘍が溶けていくような感じ」

 左上顎部のがんを発症した70代男性患者は、手術、化学療法、放射線療法を行ったが1年後に再発し、南東北BNCT研究センターを受診した。

 このとき、腫瘍の大きさは左頬の表面からも膨らみが見てとれるほどだったという。男性は中性子線の照射後、「まるで、腫瘍が溶けていくような感じがする」と話し、実際に治療によってがんは消失して、表面の膨らみや赤みもなくなった。このような完全奏功が47%にのぼるのである。

70代男性のBNCTによる治療例(画像提供:南東北BNCT研究センター)
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「再発頭頸部がんの予後は厳しく、10~50%の人が半年ほどで亡くなります。当院の治療成績では、1年生存率は90%、2年は66%。また、癌が完全になくなったまま生存している無病生存率は2年で30%です。つまり他に治療法がなくなった患者さんの3人に1人は治癒する可能性があるのです。

 このような良好な治療成績は従来行われていた治療法では報告されていません。ちなみに前述の70代男性は他に治療法がなく紹介された方でしたが現在3年9カ月経過し、再発なく元気にお過ごしです。病院が遠いからなどのことで躊躇せず、なるべく治る可能性の高いBNCTを受けていただきたいし、主治医の先生方にも再発時に最初から選択肢のひとつとして、患者さんに示してほしいと思っています」(同)

 保険診療で受けられる確かな治療であり、その対象となる患者にとっては希望となるはずのBNCTは、なぜ施設がこんなにも限られているのだろうか。