欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は2024年6月24日、米アップルのアプリ配信サービス「App Store」について、EUの「デジタル市場法(DMA)」に違反しているとする予備的な見解を発表した。巨大IT(情報技術)企業に対する規制当局の締め付けが強まっている。
アップル「DMAを順守していると確信」
欧州委は、App Storeを通さずアプリやサービスを購入できることについて、開発者が消費者に伝える機会をアップルが制限しているとして、同社の行為を問題視している。
欧州委は今後、アップルに反論や是正の機会を与えて、25年3月までに最終的な判断を下す。アップルの是正措置が不十分と判断されれば、24年3月にEUで全面適用されたDMAの初の違反事例となる。その場合、同社は世界年間売上高の最大10%の制裁金が科される可能性がある。違反が繰り返される場合、制裁金は最大20%まで引き上げられる。
これに先立ち、英ロイター通信や英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、欧州委がアップルと米メタにDMA違反があったと判断する方針だと報じていた。
メタはコメントを控えているとロイター通信は伝えている。アップルは、「当社はDMAを順守していると確信している。調査が進められるなか、引き続き欧州委と建設的な協議を行う」とコメントした。
DMAでは、アップルやメタ、米グーグル、米アマゾン・ドット・コムなど巨大プラットフォーマーの市場支配力に制限をかけ、競争阻害行為の抑止を狙っている。これに先立つ24年3月、欧州委はアップル、メタ、グーグルの3社に対する調査を開始したと発表していた。
欧州委はDMAに基づき5件の調査を進めている。具体的には、①アップルのアプリストアにおけるユーザー誘導の制約と②ウェブブラウザーの選択やデフォルト設定変更に関する制約、③メタの「広告表示に同意して無料でサービスを利用する」あるいは「同意せずに広告のない有料版を使う」の2択手法、④アルファベットのアプリストアにおけるユーザー誘導の制約と⑤Google検索における自社サービスの優遇、である。
ロイター通信によると、欧州委はこのうち、アップルとメタのケースを優先的に扱っている。最初にアップルによる違反を、次いでメタによる違反を最終的に認定する見通しだという。
アップル、アプリ配信で譲歩も新料金に批判の声
アップルはすでにDMAに対応し、サービス規約を変更している。同社は24年3月にスマートフォン「iPhone」向けアプリを開発する企業が、自社のウェブサイトからアプリ配信できるようにすると明らかにした。同社が2008年7月に「iPhone 3G」の発売とともにApp Storeを立ち上げて以来、初めての方針転換である。同社は、開発者による外部アプリストアの運営も認めた。
ただ、いずれの方法によるアプリ配信においてもアップルは、「Core Technology Fee(コア技術料金)」と呼ぶ手数料を徴収する。その対象は、EU域内のiOSで過去12カ月間、初回インストール件数が100万件を超えたアプリである。