手数料は、100万件超えた部分にかかるもので1件当たり0.5ユーロ(約80円)となる。初回インストール件数とは、 EU域内のアカウントで初めてアプリがインストールされた件数を指す。同じアカウントが以降の12カ月間、同じアプリを何度インストールしても追加料金は発生しない。買い替えた端末でインストールしたり、2台目のアップル端末でインストールしたりしても1件と計算される。

 この手数料制度を巡っては、「世界で最も人気の高いプラットフォームの1つであるiOSを開放するには至っていない」などと批判されている。欧州委もこうしたアップルの対応について、市場開放には不十分とみている。

欧州委、「広告あり無料型」「広告なし有料型」の2択を問題視

 メタは23年11月に欧州で、SNS(交流サイト)「Facebook(フェイスブック)」と画像共有サービス「Instagram(インスタグラム)」の有料版を始めた。

 欧州における「一般データ保護規則(GDPR)」の強化やDMAに対処するための措置だ。有料版では広告を表示しない。アイルランドをはじめとするEUのプライバシー規制当局はメタに対し、サービスの利用履歴に基づく広告(行動ターゲティング広告)を配信する際、事前にユーザーの同意を得るよう求めている。

 だが、そうすることで、多くのユーザーが広告表示を選択しないとみられる。このことは、売上高の98%を広告収入が占める同社のビジネスを脅かすことになる。

 そこでメタは欧州の利用者に対し、FacebookとInstagramを、①同意して引き続き広告付きで利用する「広告型」、②同意せず、広告なしで利用する「有料型」、の2つの選択肢を用意した。

 しかしこれについて欧州委は、「同意するか、支払うか」の二者択一のモデルには、「(同意したくない場合)現実的な代替手段がない」と指摘。「巨大IT企業による恣意(しい)的な個人データ収集を抑制するというDMAの目的を達成できない」と懸念を示した。

欧州委のベステアー氏「アップルの主張は賢明でない」

 欧州委員会のベステアー上級副委員長(競争政策担当)は「メタとの対話を続けることが重要だと考えている。メタがDMAを順守するために、どのような取り組みが必要か最終的に判断する」との認識を示した。

 同氏は、アップルについても言及した。アップルはかねて、「ハッカーやネット詐欺師がマルウエア(悪意にあるプログラム)をiPhoneにインストールさせることを許してしまう」とし、サイドローディングは一部の利用者をリスクにさらすと述べていた。

 これについてベステアー氏は「DMA準拠によってサービスの安全性が損なわれると主張することは賢明でない」と指摘。「DMAは市場を開放するための法律であり、リスクの増大とは関係がない。どのように安全を確保するかは、プラットフォーマー企業が決めることだ」とし、同法の趣旨を強調した。