(写真:CFoto/アフロ)

 欧州連合(EU)欧州委員会が米アップルに対し、約5億ユーロ(約810億円)制裁金を科す方針だと、英フィナンシャル・タイムズ(FT)がこのほど報じた。アップルが、スマートフォン「iPhone」やタブレット端末「iPad」のアプリ配信で、支配的立場を利用して音楽配信市場の競争をゆがめたためだという。

アップルの規約を問題視

 欧州委は、アップルが自社アプリストア「App Store」内で音楽配信事業者に義務付けている独自規約について調査してきた。スウェーデンの音楽配信大手スポティファイ・テクノロジーの苦情を受けて2020年に調査を開始した。

 情報筋がFTに語ったところによると、欧州委はアップルの規約がEU競争法(日本の独占禁止法に相当)に違反していると結論付ける予定で、24年3月初めにも5億ユーロ規模の制裁金について発表する見通しという。

 英ロイター通信などによると、アップルのApp Storeでは、音楽配信事業者に対し、他のサブスクリプション(定額課金)手段をiPhoneやiPad用アプリの利用者に伝えることを禁じてきた。

 欧州委はこの規約を問題視して調査を行い、23年2月、EU競争法違反の疑いがあると警告する「異議告知書」をアップルに送付した。異議告知書は、競争法に関する欧州委の暫定的な見解を示すものだ。その中で、アップルが定める独自の禁止事項は、(1)必要不可欠あるいは相応ではなく、(2)音楽配信サービスの利用者にとって有害であり、利用者は結果的により多くの料金を支払う可能性がある。加えて、(3)消費者の選択肢を狭め、音楽配信事業者の利益を損ねる、と指摘した。

 今回の報道によると、欧州委はアップルが他のサブスク手段を利用者に伝えるアプリを制限していたかどうかを調べていた。これまでの調査の結果、アップルの行為が支配的地位の乱用と結論付け、「不当な取引条件」を禁止する方針だという。

公取委との和解で外部リンク容認も厳しい条件

 アップルは一定の譲歩も示してきた。例えば22年3月には、日本の公正取引委員会と和解したことに伴い、世界各地で規約の一部を改定した。これにより「リーダーアプリ」と呼ばれる雑誌や新聞、書籍、動画、音楽などの閲覧・視聴用アプリに限り、外部サイトへのリンクの設置を容認した。アプリ開発者はこのリンクから自社サイトに利用者を誘導でき、利用者は外部決済サービスで支払いを済ませられるようになった。