米司法省が反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで米アップルの提訴を検討している。司法省は過去に同社を訴えたことがあったが、その対象は電子書籍といった限定的なものだった。しかし今回はスマートフォン「iPhone」などのハードウエアや様々なサービスを含む、包括的な独禁法訴訟になる可能性がある。
iPhone、Apple Watch、対話アプリ、モバイル決済も対象か
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)によれば、司法省は現在、アップルに対する調査の最終段階にあり、2024年上半期にも提訴する可能性がある。
司法省は、アップルがハードウエアとソフトウエアの市場支配力を利用し、消費者を同社製品から離れにくくし、競合他社の競争を阻害しているとみて調査している。
具体的には、腕時計端末「Apple Watch」が、他社端末に比べてiPhoneとの連携が優れている点や、対話アプリの「iMessage」とモバイル決済サービス「Apple Pay」で他社を締め出しているかどうかについて調べている。調査対象には、アプリ配信サービス「App Store」にも及んでいると関係者は話している。
好調サービス事業成長に逆風か
アップルは事業成長の鈍化に加え、強まる規制圧力という2つの問題に直面している。9月末までの23会計年度の売上高は、3832億8500万ドル(約55兆2600億円)で、前年度から2.8%減少した。NYTによれば、年間売上高の前年割れは19年以来のことだ。主力iPhoneのほか、パソコン「Mac」やタブレット端末「iPad」、Apple Watchなどの「ウエアラブル、ホームおよびアクセサリー」が軒並み減収だった(アップルの年次報告書、FORM 10-K)。
それでもこれら同社製機器の世界稼働台数は20億台を超えている。同社はその台数規模を生かし、サービス収入の拡大を図っている。23会計年度における、アプリ・音楽・動画配信などのサービス事業の売上高は852億ドル(約12兆2800億円)に達した。これは前年度比9%増と、同社売り上げカテゴリーの中で唯一の増収だった。