(写真:ロイター/アフロ)

 中国・華為技術(ファーウェイ)は、AI(人工知能)向け半導体市場で競合の米エヌビディア(NVIDIA)からシェアを奪うべく奮闘している。だが、最近はエヌビディアに真っ向から勝負するのではなく、比較的難易度が低い技術分野で収益を拡大しようとしている。

エヌビディア製「HGX H20」への対抗策

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ファーウェイは大規模言語モデル(LLM)のトレーニング(学習)需要でエヌビディアに挑戦するのではなく、プロンプトへの応答を生成するための演算処理、すなわち「推論」で対抗しようとしている。推論はトレーニングに比べると必要な計算量が少ないとされ、自社AI半導体「昇騰(Ascend)」の需要はそこにあるとみている。

 中国のAI開発企業は、米オープンAIや米グーグルといった米国の企業と異なり、エヌビディアの最先端GPU(画像処理半導体)にアクセスできない。そこで、米国の輸出規制を満たすようにエヌビディアが調整した、中国向け「HGX H20」を採用している。HGX H20は、AI向け最新機能の多くを搭載しているが、米政府の規制に準拠するため、一部の計算能力が抑えられている。それでも中国製よりも優れているとされ、同国で強い需要がある。

ファーウェイの「昇騰」に技術的な問題か

 アナリストなどによると、ファーウェイの昇騰は技術的な問題があるため、LLMのトレーニング用としては、性能が不十分とみられている。

 FTは2024年9月、昇騰を採用する企業から、ソフトウエアのバグや、エヌビディア製品からの切り替えの難しさといった不満が相次いでいると報じた。その理由として、①チップの安定性の問題、②チップ間の通信速度の遅さ、③ファーウェイ独自のソフトウエア「CANN(Compute Architecture for Neural Networks)」の性能不足、などが挙げられた。

 これに対し、エヌビディアのソフトウエアプラットフォーム「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」は、開発者にとって使いやすく、データ処理を大幅に高速化できる。エヌビディアの最大の強みの1つとして評価されている。

 半導体市場調査会社の米セミアナリシス(SemiAnalysis)の推計によると、エヌビディアは2024年に中国で100万個のHGX H20を納入し、同国での売上高が120億米ドル(約1兆8700億円)に達した。「昇騰(Ascend)910B」などを手がけるファーウェイの2倍の数のAI半導体を中国で販売した。