アマゾン・ドット・コムのアンディ・ジャシーCEO(7月8日撮影、写真:ロイター/アフロ)
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 米アマゾン・ドット・コムが10月下旬、コーポレート従業員(管理部門など)を中心に約1万4000人の人員削減を発表してから約1カ月が経過した。

 この動きは、2022年後半から続く一連の人員削減(累計2万7000人超)の一環であり、同社の31年の歴史において本社機能(コーポレート部門)の人員削減として最大規模となった。

 アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は、この大規模組織再編の狙いを、パンデミック(世界的大流行)下の過剰雇用の是正というだけでなく、肥大化した組織の「階層を減らし」、官僚主義を排除するためだと説明。

「世界最大のスタートアップ」のように迅速に行動できる組織文化への回帰を急ぐ。

 しかし、その内容を分析すると、AI分野での巻き返しを急ぐ同社の焦りと、AI導入の加速がもたらす従業員の深刻な士気低下という、二律背反の課題が浮かび上がる。

CEOが掲げる「組織のフラット化」

 「我々は組織をフラット化し、階層を減らすことに懸命に取り組んでいる」。ジャシー氏は9月、ワシントン州シアトルで開催したセラー(出品者)向けイベントでこう語り、官僚主義の排除を宣言した。

 10月下旬の決算発表でも、今回の削減が財務的な困窮やAIによる従業員の直接的な置き換えが理由ではないと強調。

 あくまで、数年にわたる積極採用で生じた「あまりにも多くの階層」と「意思決定の遅延」という「文化の問題」に対応するためだと説明した。

 この改革の背景には、ジャシーCEOが直面していた厳しい経営環境がある。

 直近の決算発表(10月30日)前まで、アマゾンの株価は年初来でほぼ横ばいと、他のハイテク大手(メガキャップ)に大きく後れを取っていた。

 収益の柱であるクラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」は、米マイクロソフトや米グーグルとのAIインフラ競争で「出遅れている」との認識が市場で広がり、音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」も生成AI時代への対応が遅れるなど、課題が山積していた。