もしもデータセンターへの投資に陰りが見え始めたら・・・(Pete LinforthによるPixabayからの画像)
目次

 AI開発競争が激化する中、そのインフラを支える半導体大手やクラウド企業の間で、巨額の投資と売り上げが表裏一体となった「循環取引」の構図が鮮明になっている。

 10月下旬、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、米エヌビディア(NVIDIA)や米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)といった半導体メーカーが、米オープンAIなどの大口顧客に巨額資金を投じ、その資金が自社製品の購入に還流している実態を報じた。

 AI開発に必要な「計算資源」の確保を最優先する業界の動きは、インフラ構築を加速させる一方、かつてのドットコムバブル期に見られた過剰投資の構図と類似しているとの懸念も浮上している。

スパゲッティ状に絡まる資本と取引

 WSJが指摘する「循環性」は、AI業界の複雑な資金調達の仕組みを指す。

 典型的なのは、企業A(半導体メーカーなど)が企業B(AI開発企業など)に投資し、企業Bがその資金で企業Aの製品(半導体やクラウドサービス)を購入する流れだ。

 報道によれば、その事例は業界の根幹で相次いでいる。

 AI向け半導体で市場を独占するエヌビディアは9月、オープンAIに最大1000億ドル(約15兆円)を投じる戦略的提携を発表したが、この資金はオープンAIがエヌビディア製チップを購入する原資になるとみられている。

 エヌビディアの競合であるAMDは、オープンAIがAMDの株式を格安で取得できる新株予約権(ワラント)を発行する。これは実質的に、AMDの顧客になってもらうための「支払い」に近いと報じられた。

 このほか、エヌビディアはAIクラウドインフラを手がける米コアウィーブにも出資。チップを販売する一方、コアウィーブの未販売クラウド容量の購入を確約することで、経営を下支えしている。

 そのコアウィーブの最大顧客は、オープンAIに巨額出資する米マイクロソフト。オープンAI自体もコアウィーブの顧客であり、株主でもある。

 米モルガン・スタンレーのアナリストは、こうした主要6社間の資本の流れを「皿に盛られたスパゲッティのようだ」と評している。

 主要6社とは、①オープンAI、②マイクロソフト、③エヌビディア、④コアウィーブ、⑤AMD、そして⑥米オラクルだ。