米アマゾンが新型ロボットの「ブルージェイ」やエージェント型AI「プロジェクト・エルーナ」を発表した配送関連の年次イベント「Delivering the Future」(10月22日、写真:AP/アフロ)
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 米アマゾン・ドット・コムは10月下旬、物流現場の効率化と従業員の安全性向上を目的とした新型ロボット「Blue Jay(ブルージェイ)」や、エージェント型AI「Project Eluna(プロジェクト・エルーナ)」を発表した。

 同社はこれらの技術を「従業員との協働」を深めるものと位置づけている。

 しかし、この発表は、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)による報道の直後という、示唆的なタイミングで行われた。

 NYTは、アマゾン内部で大規模な雇用代替(あるいは新規雇用の抑制)を可能にする「75%自動化」計画が進められていると報じていた。

 一連の発表から約4週間が経過した今、アマゾンが公式に打ち出す「人間中心」の技術革新と、内部文書で示されたとされる徹底した「効率化至上」の路線。

 その2つの側面から、同社が導入した新技術の意味をあらためて考察する。

公式発表された「協働」のための新技術

 先月、アマゾンが「Delivering the Future(未来を配送する)」カンファレンスで披露した技術は、主に3つある。

 第1に、次世代ロボットシステムのBlue Jayだ。

 これは複数のロボットアームが協調し、従来は3つの異なるステーションで行われていた「ピッキング(取り出し)」「ストウ(Stow、格納)」「コンソリデート(集約)」という3工程を1カ所で同時に処理できる。

 アマゾンによれば、これによりスペース効率が向上し、特に都市部での当日配送(Same-Day Delivery)の迅速化に貢献するという。

 すでに米南部サウスカロライナ州の施設でテストされており、施設内のアイテムの約75%を処理可能だとされる(アマゾンの発表資料①)。

 第2に、エージェント型AIのProject Elunaである。これは、フルフィルメントセンター(FC)の現場管理者を支援するAIだ。

 施設全体のリアルタイムデータや過去のデータを分析し、「ボトルネック(停滞箇所)を回避するため、人員をどこに移動させるべきか」といった推奨事項を自然言語で提示する。

 これにより、管理者が多数のダッシュボード監視に費やす「認知負荷」を軽減し、チームのコーチングなど、より人間的な業務に集中できるとしている(アマゾンの発表資料②)。

 第3が、配送ドライバー(DA)向けの「スマート・デリバリーグラス」だ。これは、AIとコンピュータービジョンを搭載した眼鏡型ウエアラブル端末で、ドライバーの視野内に直接、配送指示、荷物のスキャン情報、徒歩ナビゲーション、を表示する。

 スマートフォンを操作する必要性を減らし、ドライバーが常に前方を向いて周囲の安全に集中できる「ハンズフリー」体験を実現するのが狙いだ(アマゾンの発表資料③)。

 アマゾン・ロボティクスのタイ・ブレイディCTO(最高技術責任者)は、「本当の主役はロボットではなく人間だ。我々が共に構築する仕事の未来そのものだ」と述べ、新技術があくまで従業員の作業をより安全で、より賢く、よりやりがいのあるものにするためのツールであると強調した。