ウェイモの自動運転タクシー(2024年9月28日サンフランシスコで、写真:ロイター/アフロ)
米アルファベット傘下で自動運転技術を開発するウェイモが、欧州市場に参入する。
同社は10月中旬、英国ロンドン市内で2026年から完全自動運転タクシー(ロボタクシー)の試験サービスを開始する計画を明らかにした。
米国5都市で1000万回以上の有償配車実績を持つウェイモの欧州初進出は、都市交通の未来を巡る世界的な技術開発競争が、新たな段階に入ったことを示している。
ウェイモ、欧州初進出 26年始動目指す
ウェイモの計画では、運転席に人がいない完全自動運転の配車サービスを、2026年中にロンドンで開始する。まずは、市内の道路をマッピングし、データを収集することから始めた。
車両には英ジャガー・ランドローバー製の電気自動車(EV)「I-PACE(Iペース)」を使用し、人間のセーフティードライバーが乗務する。
10年以上にわたる公道でのデータ蓄積が同社の技術的な強みであり、ロンドンでも同様に慎重な手順を踏む。車両運行管理では、ナイジェリア発のフィンテック企業ムーブ(Moove)と提携する。
背景には、英国政府の積極的な後押しがある。
英スターマー政権は自動運転技術を経済成長の柱と位置づけている。今年6月には法整備が完了する2027年を前に、2026年春から事業者が試験的なサービスを開始できる新たな制度を発表した。
ハイディ・アレクサンダー運輸相はウェイモの計画を「大変喜ばしい」と歓迎しており、国を挙げた誘致が同社のロンドン進出につながった形だ。
ロンドンで激化する新たな競争
しかし、ロンドン市場はウェイモの独壇場とはならない見通しである。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、配車サービス大手の米ウーバーテクノロジーズも、英国の自動運転新興ウェイブ・テクノロジーズ(Wayve Technologies)と組み、2026年のサービス開始を目指す。
ウーバーの巨大配車プラットフォームとウェイブのAI技術を組み合わせ、ロンドン市場における主導権の早期獲得を狙う。
ウェイモがLiDAR(レーザーレーダー)と呼ばれるセンサーや高精細マップを駆使するのに対し、ウェイブはカメラ映像をAIが解析する「エンド・ツー・エンド(E2E)AI」方式を主軸とする。
これは米テスラのアプローチに近く、米国で繰り広げられてきた「着実な拡大」のウェイモと、「AI革命」のテスラという、技術思想の異なる競争が、形を変えてロンドンの地でも始まろうとしている。
ウェイモ方式は都市ごとのデータ作成に時間と費用がかかるが、高い安全性を誇る。
一方、AI主導の方式は理論上、より迅速かつ安価な世界展開が可能とされ、両者の思想の違いが浮き彫りになっている。