安全性と利便性向上に期待
ウェイモは、自社技術が都市交通に大きな恩恵をもたらすと強調する。
同社によれば、米国での1億マイル(約1億6000万キロメートル、地球約4000周分)を超える完全自動運転の実績で、同社車両が関与した人身事故は人間が運転する場合に比べて5分の1にとどまるという。
このデータは、2041年までに交通事故の死者・重傷者ゼロを目指すロンドン市にとって魅力的といえそうだ。
英国の視覚障害者援護団体(RNIB)からは、人々の自立した移動を可能にする「新時代の幕開け」として期待の声が上がるなど、新たな交通弱者支援の可能性も秘めている。
「中世の道」と「社会との共存」
一方で、ウェイモの前途には課題も山積する。最大の難関は、ロンドン特有の複雑な道路環境だ。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、専門家からは、米国の整然とした都市で訓練されたAIが、中世由来の入り組んだ路地や、複雑な環状交差点(ラウンドアバウト)にどこまで対応できるのかと疑問視する声も出ている。
ロンドンの象徴でもある「ブラックキャブ」(黒塗りタクシー)を擁する、伝統的なタクシー業界からの反発も予想される。
運転手になるには「ザ・ナレッジ」と呼ばれる市内の全道路を記憶する難関試験を突破する必要があり、近年は、なり手が増えにくい状況にある。
ロボタクシーは、こうした既存交通システムとの共存のあり方も問われることになる。
ウェイモは今後、規制当局の許認可を得て、ウーバーなどとの熾烈な競争を乗り越えていく必要がある。
同社は米国での事業展開において、サービス開始前から地元当局や障害者団体と対話を重ねてきた経緯がある。
技術的な課題解決と並行し、こうした地域社会からの信頼を得ることが、円滑な事業拡大のカギとなるだろう。
(参考・関連記事)「ロボタクシー覇権争い、鮮明になる2つの道筋 テスラ「AI革命」か、ウェイモ「着実な拡大」か | JBpress (ジェイビープレス)」