ビル・ゲイツも再エネ100%を疑問視している

 省エネ技術はいつも、既存のエネルギー需要を減少させることには成功してきたが、それ以上に、全く新しいエネルギー需要の発生が上回り、電力需要は長期的な趨勢としては増大してきた。

 そして、電力需要が急増する場合には、原子力発電所に比べて意思決定から運転開始までの時間が短くて済む火力発電所が、ますます重要になる。日本は東日本大震災直後の電力不足をなんとか乗り切ったが、これは次々に火力発電所を新設したからだった。

 いまの世界情勢において、CO2を2050年にゼロにすることに囚われるのは愚かである。フランスはカタールからLNGを購入するにあたり、2026年から27年間の長期契約を結んだ。つまり2053年までの契約だ。日本もこれぐらい長期の契約を結ぶならば、安定して安価な契約をすることが可能になる。LNGだけでなく、石炭も長期契約をするとよい。

 前述の政府資料を見ると、マイクロソフトが再エネ推進企業のように書いているが、よく見ると「クリーン電力」と書いてあって、再エネだけではない。じつはマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツは再エネ100%というアイデアをナンセンスだとしている。東京のような大都市が太陽光100%になったとして、台風で3日悪天候になったらどうするのだ、それでも電力供給ができるような蓄電池技術は存在しない、と述べている。そしてビル・ゲイツは実は原子力と核融合を推進している。

 日本も、再エネではなく、原子力を推進すべきだ。いまの日本のGX実行戦略なるものは、一応は再エネと原子力の同床異夢状態であるが、やはり「再エネ最優先」が色濃く出ている。いま必要なことは、この再エネ最優先を止めることであり、原子力最優先に抜本的に変えることだ。

 そして愚かな脱炭素はやめて、化石燃料をきちんと位置付けるべきだ。政府の言う「デジタル敗戦」をしないためには、何よりもまずは安価な電力こそが必要である。それによってデータセンターや半導体工場の立地が進めば、しめたものだ。その結果、予期せぬ急激な電力需要増が起きるとすれば、それに応えられるのは化石燃料による火力発電をおいてほかにはない。