台湾統一の野心を隠さない中国の習近平国家主席が狙うものとは…(写真:新華社/アフロ)

私はエネルギー政策の専門家であるが、エネルギーとは、何よりも戦略物資であり、20世紀の戦争の多くはエネルギーを巡るものだった。したがってエネルギー政策を論じるならば、本来は、まずは地政学や安全保障から入らねばならない。だが平和ボケの日本においては、エネルギー専門家と称していても、環境のことは知っていても、地政学も安全保障も全く知らない方が大半である。そこで本稿では、日本を巡る地政学状況について述べ、いま安全保障の観点においてエネルギー政策はどうあるべきか、指摘したい。

(杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

中国の歴史観における台湾統一の必然性

 1949年に中国は共産党独裁国家になった。以来、文化大革命では凄惨な虐殺があり、またウイグル、チベットなどでのジェノサイドが長らく指摘されてきた。このような独裁政権は、ひとたび権力を手放すと、たちまち報復の対象になる。このことは、冷戦末期の東欧における独裁者の処刑など、枚挙に暇がない。

 中国共産党は、1989年の天安門事件で、その深淵を見た。あと少しで彼らは破滅するところだった。

 中国共産党が台湾独立を決して認めることができないのは、台湾が「中国人による、民主的な、もう一つの中国」であることを容認できないからだ。共産党独裁体制に代わるものが存在しうること、そして中国国内の人権問題を批判し、共産党の正統性を批判することは断じて許されない。

 したがって、最も悪くても、親中的な、つまり中国共産党を批判しない台湾であるべきであり、もっといえば、中国共産党の下に統一されるべきである、となる。

 以上は本音の部分であるが、台湾統一の必然性は、中国ならではの歴史観で愛国的に物語られている。

 つまるところ、中国は歴史的に一つであるゆえ、その一部である台湾は当然に統一されねばならない、というものだ。