(写真:アフロ)

(杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

政府は火消しに努めるが…

 内閣府再エネタスクフォースの民間構成員である自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長(3月27日に民間構成員を辞任)が会議に提出した資料に、中国企業である国家電網公司(国家送電会社の意味)の透かしロゴが入っていた。この件は、産経新聞などが取り上げ、ネットでも大きな話題となった。

 同タスクフォースは河野太郎デジタル相の肝いりの会議体であるが、根拠法のある審議会ではない。それにもかかわらず、他の省庁の審議会に出席し、再エネ推進の立場から、事実を無視ないし歪曲した暴論を繰り返したとされ、識者からは大変に評判が悪かった。

 今回のロゴ問題について、国会では国民民主党の玉木雄一郎代表らが取り上げた。河野大臣と岸田首相は、ロゴがミスで混入したに過ぎない、些細なことだとして火消しに努めている。

 だが、これは氷山の一角に過ぎないとして、さまざまな憶測が飛び交っている。

 中国の組織的工作が影響を及ぼして、日本のエネルギー政策が決定されているのではないか、大林ミカ氏の所属する自然エネルギー財団は当初から、日中をはじめ東アジア全域の送電線を結ぶ「アジア・スーパーグリッド構想(ASG)」を打ち出しているが、これは日本の電力供給を支配しようとする中国の策略の一部ではないのか、といったことだ。

 そして、事件を踏まえた対策としては、大林氏の経歴がはっきりしないことから、政策決定に関わる人々のセキュリティ・クリアランス(身辺調査)をすべきだ、といった意見が出ている。

 このような憶測が、どの程度当たっているのか、私には分からない。特段の証拠が出てこない可能性も高いと思う。

 だが今回の問題が、審議会委員などのセキュリティ・クリアランス強化や再エネ政策における経済安全保障の強化といった形だけで幕引きされてしまうことを危惧する。背後には、もっと深刻な問題があるからだ。

中国企業のロゴ入り問題を受けて記者会見する自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長(写真:共同通信社)