青野 あのとき立ち上げられた紛争処理機構は、「被害者のために充実した調査を行い、事実認定を適正化する」という謳い文句のもとで業務をスタートさせました。新証拠の受理はもちろん、紛争処理業務規程には「申請者の申出があれば、本機構が独自の鑑定等を実施する」とまで明記されています。

 ところが、当初の理念はいつの間にか消滅し、ついには、被害者の出す新しい証拠すら受け付けない、という「被害者切り捨て」ともいえる運用になってしまったため、何としても元に戻さなければならないと思ったのです。

裁判で和解、こちらの主張は全面的に受け入れ

柳原 それで、青野先生ご自身が原告となって紛争処理機構を相手に提訴されたわけですね。裁判の結果はどうだったのですか。

青野 2024年4月24日、札幌地方裁判所民事第1部で和解が成立しました。

 被告(紛争処理機構)側が、「機構の運用は、業務規程の解釈として無理があり、被害者への対応として不十分だった」と認めたうえで、「今後はその運用を廃止し、二度と再開しない」と約束し、裁判長からも「全て青野弁護士の言うとおりに運用が改善されたので、和解をしてはどうですか」と勧告がありましたので、和解に応じることにしました。

「新証拠を審査の対象としない運用」は、2013年11月6日にはじまり、2023年8月1日からは、「新証拠も審査の対象とする運用」に変更したとのことです。

青野渉弁護士