ロシアを牽制する「バルト海作戦演習」

太平洋艦隊からのスイングも

 今年のバルト海作戦演習(BALTOPS24)は、ロシアのウクライナ侵略が続く中、ウクライナの勝利とロシアの欧州侵略の拡大を抑止するため、米国をはじめとするNATO陣営の結束をロシアに誇示し、牽制する狙いがある。

 第53回目となるBALTOPS24 は、フィンランドとスウェーデンの新加盟国が加わり、20か国、50隻以上の艦艇、25機余の航空機、約1万人の人員で構成される同盟最大規模の演習となった。

 計画されている活動には、対潜水艦戦、砲撃訓練、水陸両用作戦、地雷除去、医療対応などが含まれる。

 NATOは、ウクライナ戦争で黒海で起きている海上作戦をよく研究しており、それに基づく欧州大西洋地域の防衛のための新たな作戦計画も実行される予定である。

 BALTOPS24のもう一つの初開催は、米インド太平洋軍(INDOPACOM)の海軍艦艇の一部が参加していることである。

 いわゆる、他戦域への戦力のスイングである。

 東大西洋・地中海を管轄する第6艦隊と西太平洋・インド洋を管轄する第7艦隊は、インドとパキスタン国境から真南に下した線で責任境界を接している。

 そのため、今回は相互に戦力をスイングする事態があることを想定した演習を行ったと見ることができよう。

 言うまでもなく、欧州とインド太平洋は繋がっている。欧州で起きていることは、我が国へも影響し、また逆もあり得る。

 まして、中露は「包括的・戦略的協力パートナーシップ」を確立し、それを根拠として中国軍は、ロシアから戦闘機や駆逐艦、潜水艦など近代的な兵器・装備を購入するとともに、定期的な軍高官などの往来に加え、我が国周辺海空域で盛んに共同訓練・演習を行っている。

 ウクライナ戦争では、中国はウクライナ侵略についてロシアへの直接的な批判を避け、外交的・経済的支援を行うなど、共闘体制にあることを考えると、なおさらその関係の深さに関心を向けざるを得ない。

 同時に、米国やNATOの対露の取組みは、我が国の対中の取組みに、大きな示唆や教訓を与えてくれるであろう。

 また、NATO/UEとの協力連携の強化の必要性も、改めて気付かせてくれるのである。