米メジャーリーグでも活躍。写真は1998年にニューヨーク・メッツの投手としてメジャーデビューを果たしたときのもの(写真:ロイター/アフロ)

野球界の常識にとらわれずチャレンジする

 吉井監督は就任する際、マネージメントやチームビルディングについて勉強するために関連書籍を読み漁ったという。多くの本に目を通す中で、さまざまな人の意見を聞きながら物事を決めていく「聴く監督」の姿勢が定まったようだ。

 前述した「選手との壁を作らない」というのも、対話のためだけではなく、チームの勝利を実現するため、立場の違いに関係なくお互いの意見を出し合える場を作る目的もある。

 監督は「選手、そしてチームにとって有益だと思うことがあれば、野球界の常識から逸脱していても、積極的に取り組むべきだと考えている」と語っている。実際に彼は筑波大学大学院でコーチングと心理学を学んだり、メジャーリーグで取り入れられている「データを最大限に活用するコーチング法」の導入を試みたりと、傾聴以外にも数々の新しい手法を試みている。

 多様な意見を拾い、多角的な視点から挑戦を続ける監督の姿は、「聴いて、吸収して、チャレンジする監督」と言ってもいいかもしれない。

(編集部より)記事初出時、「2年連続で千葉ロッテマリーンズをクライマックスシリーズへ導いた」とありましたが、「2年連続」は誤りでした。該当部分を削除し、お詫びいたします。(2024年6月3日22時43分)

聴く監督』(吉井理人著、KADOKAWA)