- 「国立大学の学費を150万円に上げるべきだ」──。中央教育審議会・特別部会での慶応義塾長・伊藤公平委員の提言が波紋を呼んでいる。
- 国立大学が大学運営費交付金を1人当たり年平均230万円受け取っている状況が不健全な競争環境を生んでいるとの認識が発言の背景にある。
- だが、教育ジャーナリストの後藤健夫氏は「文科省に言わされたのではないか」と睨む。その理由とは。(後藤氏へのインタビュー前編)
湯浅大輝(フリージャーナリスト)
■国立大学費150万円にすべき?後藤健夫氏インタビュー
(前編)慶大塾長は文科省に言わされた?支出減らしたい財務省、私大は「不当廉売」と不満
(後編)東大生の親の4割は年収1000万円超、給付型奨学金とセットで交付金見直しを
「法人」なのに国が面倒を見る矛盾
──伊藤委員の「(2040年以降の)国立大学の学費は年150万円に」という提言を、後藤さんはどのように分析されていますか。
後藤健夫氏(以下、敬称略):以前、教育再生実行会議の委員にも名を連ねていた首都圏の私立大学のお偉いさんからこういう話を聞いたことがあります。
「国立大学は不当廉売だよ」
不当廉売とは何か。2004年に独立行政法人化したのにもかかわらず、国立大学法人運営費交付金をもらい続けて、「稼ぐ」気概がなく、それでいて学費が安いことを指します。多くの私立大はほとんど学生の学費による収入で運営されているのに、国立大は学費を得ているうえに多額の運営費交付金をもらっているのです。
もちろん、私立大にも助成金が下りてはいますが、イギリスの教育支援産業の偉い人に日本の国立大の話をしたら笑われました。「どこが独立行政法人なのか」と。