「2027年問題」は決して疎かにできない

 今回の中国の軍事演習は、2022年から続いている台湾への軍事的圧力の一環であり、中台中間線への侵入が今や常態化している。

 また、同演習は「2024A」というナンバリングが付してあり、今年の一連の演習の最初のものである可能性を示唆していると考えられる。

 中国の台湾へのアプローチは、いわゆる「グレーゾーンの戦い」で、長い時間をかけて台湾を弱体化させるのが狙いであるが、時間の経過とともに軍事的側面の度合いが強まっている。

 そして、ターゲットは台湾だけでなく、オーストラリア軍ヘリコプターの前方に中国軍機が照明弾を投下した黄海から、わが国尖閣諸島の東シナ海、そしてフィリピンと対立している南シナ海へと向けられている。

 このような第1列島線以内の中国軍の攻撃的行動は、領域拒否(AD)戦略、すなわち黄海から東シナ海、南シナ海に至る中国沿海域の内海化、軍事的聖域化の一環であることは、もはや疑う余地がない。

 習近平国家主席は、2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう軍に指示した。この「2027年問題」は決して疎かにはできず、真剣に受け止める必要がある。

 台湾の頼新総統は就任の演説で、「中国からの様々な威嚇や浸透工作」に対処するため、

①国防力を強化し、

②経済安全保障を構築して、

③「世界の民主主義国家」との連携を進める方針を示した。

 この方針は、日本をはじめ第1列島線国の共通した課題でもある。

 特に、「台湾有事は日本有事」が懸念される中、③については、日米台3か国連携メカニズムを構築することが差し迫った課題である。

 そして、それを日米比3か国の戦略的トライアングルと連結した「統合島嶼防衛構想」を強力に推進することが、中国の野望を抑止する上で、今後最も大事な取組みとなろう。