リニア中央新幹線の新駅の工事が進められている岐阜県中津川市に置かれた看板。2027年の開業は延期された(写真:共同通信社)

前知事の辞任に伴う静岡県知事選が5月26日に投開票されます。最大の争点は、JR東海が進めるリニア中央新幹線です。前知事の川勝平太氏は自然環境への影響が懸念されるとして、静岡工区での着工を認めず、開業は当初予定の2027年から2034年へと大きく遅れる事態になっていました。トンネル工事に伴い、南アルプス周辺では井戸や沢の枯渇など深刻な事態が生じています。東京・品川―名古屋を最速40分で結ぶという計画はどうなっているのでしょうか。専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。

フロントラインプレス

反対派の川勝前知事が突然

 JR東海の丹羽俊介社長は2024年3月29日、国土交通省の有識者会議に出席し、リニア中央新幹線について「2027年の名古屋までの開業は実現できる状況にはない」と述べ、開通見込みの大幅な遅れを明らかにしました。

 丹羽氏はその後の記者会見で「残念ながら、品川―名古屋間の2027年の開業は実現できない。静岡工区の着工の遅れが開業の遅れに直結しているが、一日でも早く静岡工区を着工できるように全力を尽くしてまいりたい」と述べたのです。

リニアに反対していた川勝前知事(写真:共同通信社)

 リニア中央新幹線の静岡工区については、静岡県知事だった川勝平太氏が「自然環境対策に問題がある」「重要な水源である大井川が枯渇してしまう」と懸念し、工事を許可していませんでした。それによって、リニア計画は大幅に遅れていましたが、早くても今から10年後の2034年開業になるとの見通しが公式に明らかにされたのは、このときが初めてでした。

 ところが、丹羽社長の見解表明から3日後の4月1日、川勝氏は入庁式の訓示で「県庁はシンクタンク。野菜を売ったり牛の世話をしたり、モノを作ったりとかと違い、皆さまは頭脳、知性の高い人たち」と発言しました。すると、差別的発言だとの指摘がSNSなどで批判が沸騰。大手メディアも大きく報じたことなどから、川勝氏は任期途中での辞任を表明することとなりました。

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 リニア計画について、川勝氏は一貫して「環境対策がずさん」と批判。トンネル工事などで静岡県の水源・大井川の水位が極端に減ってしまう恐れがあるなどとして、JR東海側に万全の対応を求めていました。

 このため、リニア推進側は川勝氏を「目の上のたんこぶ」と見なしていたようですが、地元の市民団体などは「JT東海のゴリ押しを許さない知事」と評価。辞任の表明後も川勝氏に向けて続投や再出馬を要請していた、という経緯があります。

 では、リニア計画のいったい何が問題だったのでしょうか。