- あなたの仕事がうまく回らないのは、職場に巣食う「害虫」のせいである――。全体最適のマネジメント理論TOC(Theory of Constraints=制約理論)の第一人者、岸良裕司氏(ゴールドラット・ジャパンCEO)が、会社を停滞させる構造的な問題を害虫に見立て、その特徴と対処の仕方を、実例を基に伝授する。
- 第16回は、仕事とプライベートを両立できない「イタバサミ虫」。働き方改革を推進中の職場で、部下の残業削減のしわ寄せを被っている管理職の周辺に発生する。
- 対立する手段の板挟みでモヤモヤとした日々を過ごし、メンタルの問題を引き起こすことも。ただ、その解決策は意外とシンプル。「クラウド」なる手法とは?(JBpress)
(岸良裕司:ゴールドラット・ジャパンCEO)
名称:イタバサミ虫
職場へのダメージ:★★★☆☆
主な生息地: 「働き方改革」「ワークライフバランス」などに取り組む会社で、「仕事」と「プライベート」の板挟みになった現場に数多く発生する。たいていの場合「働き方改革」「ワークライフバランス」などの言葉が入ったスローガンが飾られている職場にいるので発見は容易である。
特徴:「仕事」と「プライベート」の板挟みにハマると、「モヤモヤ」という精神的不安を引き起こすストレス物質を放ち、心理的に不安定な状況を作り出し、毎日を憂鬱にする毒虫。放置すると人材の離職を招くことがあるので早期対策が必要である。
「仕事」と「プライベート」、どっちが優先
「仕事」と「プライベート」、どっちを優先したらいいのだろうか?
こんな板挟みに悩むようなことがあったら、あなたの会社には「イタバサミ虫」が生息している可能性が高い。「仕事で成功する」ためには「仕事を優先する」必要があるが、この場合「プライベート」が犠牲になりかねない。一方で、「プライベートを大切にする」ためには「プライベートを優先する」必要があるが、この場合には「仕事で成功する」ことが犠牲になりかねない。
「働き方改革」が世間で叫ばれる昨今、行き過ぎた残業を減らし、プライベートを大切にしてもらおうと残業削減に取り組む会社は少なくない。社内に「働き方改革プロジェクト」を立ち上げ、外部講師を招いて講演を実施したり、各部署の残業時間を監視したりすると、現場の残業は削減されるようになる。
しかし、業績が下がるのは許されるはずもない。こなさなければいけない仕事が減るわけではない。家に仕事を持って帰ってやるようなことが起きると「ブラック企業」のレッテルを貼られる。それを避けようとすると、しわ寄せは残業代のつかない管理職に行く。
やがて管理職の周辺にはイタバサミ虫が大量発生し、精神的不安を引き起こすストレス物質「モヤモヤ」を放つ。ひどいときにはメンタル問題が多発する原因にもなりかねないので注意が必要である。