1990年、南アフリカ政府はマンデラを正式に釈放し、政治活動の許可も与えた。以来、ANCの議長に就任したマンデラは精力的に政府やその他の政党と折衝を重ね、アパルトヘイトの撤廃と全人種による総選挙を実現させたのだった。
ようやく漕ぎつけた「全人種による」総選挙
さて、南アで初めての全人種参加による総選挙は投票日を迎えた。投票日の朝、まだ薄暗い夜明けの黒人居住区ソウェトの投票所には長い列ができていた。男性はスーツ、女性は華やかな色のワンピース姿が目立つ。きちんと正装をして初めての投票に向かうのだ。
「待ちくたびれました?」とぽつんと列から外れて腰掛けている年老いた男性に声をかけた。
「72年も待ったのだから」とその人は茶目っ気のある笑顔を返してきた。
選挙は予想通りANCが6割以上の252議席を獲得して勝利し、ネルソン・マンデラが次期大統領になることが決まった。選挙中からヨハネスブルクではお祭り騒ぎが続いていたが、結果を受けてホテルにマンデラが現れると騒ぎは一層激しくなった。ホテルの中も外も「ビバ!! マンディーラ!!」の大合唱で埋め尽くされ、マンデラ次期大統領も腰を振って踊りで応えた。

