ラベンダーの香りが睡眠に効く理由

 2021年に韓国の研究者らによって発表された、睡眠問題に対する香りの効果を調べた研究のシステマティック・レビューを紹介します*2

*2:Cheong MJ. et. al., “A systematic literature review and meta-analysis of the clinical effects of aroma inhalation therapy on sleep problems.” Medicine (Baltimore), 2021,Mar 5;100(9):e24652.

 システマティック・レビューというのは、研究のひとつの手法で、自分では実験をしない研究方法です。実験をせずにどうするかというと、これまでに論文などで発表されている実験結果のデータを集めて、実験条件などを考慮しながらまとめて分析し直します。ひとつひとつの研究だけではデータ数が少なくても、たくさんの研究結果を解析することで、より信頼性の高い結果を知ることができます。

 研究者らは、34件の信頼できる論文を解析し、精油の香りの吸入が睡眠の改善に有益であると結論づけました。

 34件の論文の対象者はさまざまです。施設で暮らす高齢者、血液透析を受けている患者、看護師、働く女性、大学生、地下鉄乗務員、睡眠障害と不安症を持つ患者などの人々が、それぞれの研究で香りの力によって睡眠が改善されました。

 用いられた香りは、ラベンダー単独が9件、ラベンダーにほかの精油(スイートオレンジ、ローズウッド、イランイラン、ベルガモット、ネロリ、カモミール、スイートマジョラム)を1種類か2種類混ぜたものが17件。そのほか、グレープフルーツ、カモミール、レモン、フィトンチッド(樹木が発散する化学物質)などがありました。

 研究者らはさらなる分析結果で、混合した香りよりも単一の香りのほうが効果が高かったということも述べています。

 ほとんどの研究でラベンダーの香りが使用されていますが、これはラベンダーの香りにストレスや不安をやわらげる効果に加えて、鎮静作用があるからだと考えられます。