イランの自制はいつまで続くか

 このようなネタニヤフ政権の強硬策に対し。イランとヒズボラは今のところ、慎重姿勢をとっている。

 特にヒズボラは、今後の戦況推移により対応を決めると表明しており、15万~20万発保有しているといわれるロケット弾および10発程度の弾道ミサイルについても限定的使用に止めている。

 しかし、ガザ地区での戦闘が長引き犠牲者が増えるにつれて、ヒズボラのロケット弾攻撃はより激化しており、イスラエル側もレバノンのより中枢部にまで爆撃範囲を広げている。

 イスラエル軍は一部の兵力をレバノン国境に増強しており、戦闘がさらに激化し、イランとイスラエルとの直接的戦闘が生起するおそれが高まっている。

 また、イランは、兵器級濃縮ウラン入手直前か、すでに保有済みとみられている。

 現段階は、イスラエルからみれば、イランの核保有の芽を摘む最後の好機と言え、場合によりイランの地下の核関連施設等を破壊するために核使用をする可能性も排除できない。

 イランが本格的な核保有に踏み切り、最小限核抑止の水準に近付けば、イスラエルがこれらの秘密の核施設や核ミサイル基地を先制攻撃で破壊することは困難になり、イラン側の報復核攻撃のリスクが高まるためである。

 このようなネタニヤフ政権の強硬姿勢に対し、イラン指導部はイスラエルにイラン攻撃の口実を与えないために慎重に行動しているようにみられるが、フーシやヒズボラへの支援を停止する兆候もない。

 今後も、代理戦争やテロ活動は継続するとみられる。

 しかし、イラン側の自制がいつまで続くか不透明である。

 今後の情勢いかんによるが、ヒズボラとイスラエル、フーシと米英との戦闘は激化しており、イラン国内の強硬派や民衆の不満が高まり、いつ紛争がイスラエルとイランの直接の戦いに拡大するか、予断は許さない。