ガザ、断食前から危機的な飢餓状態
1973年10月6日に始まった第4次中東戦争は、アラブの人たちの間では「ラマダン戦争」と呼ばれています。エジプト軍とシリア軍は、イスラエルに占領されたシナイ半島とゴラン高原をそれぞれ電撃的に奪還しました。その後、イスラエルの反撃に遭い、最終的には敗北しますが、ラマダンの時期にイスラエルの「不敗神話」を打ち砕いた戦いとして、アラブの人たちの間で語り継がれています。
昨年、ハマスがイスラエルに越境攻撃したのは、ラマダン戦争からちょうど50年後の10月7日のことでした。現地からの報道によると、ハマスはイスラエル人1200人を殺害し、240人を人質に取りました。その後、圧倒的な武力を持つイスラエル軍の報復攻撃が続き、すでに3万人以上のパレスチナ人が殺されています。多くは子どもと女性です。負傷者も7万人を超えました。
北部から始まったイスラエルの攻撃により家を失い、命からがら逃れてきた人たちがいま、ガザ最南部のラファに身を寄せています。もともと28万人しかいなかったラファでは、ガザの人口の半数以上の140万人がひしめいています。これほどの人口密集地でイスラエル軍が地上戦に踏み切れば、これまで以上に凄惨な流血の事態となるのは間違いありません。
しかもガザでは、イスラエル軍がインフラを徹底的に破壊し、援助物資の搬入も許さず、食料や水が極端に不足しています。罪のない子どもたちが連日、脱水症や栄養失調で死亡しています。
国連機関は、ガザの人口の4分の1に当たる60万人近くが飢餓寸前にあると警告しました。ガザの人たちはラマダンで自ら断食する前から、食料や水が手に入らない飢餓状態に置かれているのです。しかも、本来は断食の義務がない子どもたちが飢えで命を奪われるという信じ難い悲劇が進行中です。