選挙の票集めが目的か
医学部の定員増の話は今に始まったわけではない。リベラル派の文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2020年にも、医学部の定員を10年間かけて4000人増やし7000人程度にする方針が打ち出されたことがある。このときも大韓医師協会が猛反発。「医師は足りている」として、コロナ禍だったにもかかわらずストライキに打って出た。結局、コロナ対策を優先するために政府は医師たちの要望を受け入れて定員増を見送った。
なぜ、韓国の医師たちは、ストライキも辞さないほど強硬に医学部の定員増に反対するのだろうか。先ほども述べたように、韓国の医師数はOECD加盟国全体で見ても、決して誇れる水準ではない。「医師は足りている」という反対理由は説得力に欠ける。
医学部の定員増に反対する理由としてまず考えられるのは、選挙対策として医学部の定員増が打ち出されているのではないかという、政治への不信感だ。医学部の定員増は韓国社会が望んでいたものであり、発表後の世論調査ではその影響で、大統領支持率が1.9%アップして、39.2%となった。
一方で、韓国では4月10日に国会議員選挙を控えており、与野党の支持率がほぼ拮抗している。選挙まで2カ月に迫ったタイミングでの医学部定員増の発表が、選挙での票集めだと指摘されているのだ。国民の意思に沿うように政策を打ち出して、選挙後に医師会の要望を聞いて医学部の定員を再調整するのではとの意見がある。これに対して保健福祉部は13日に行ったブリーフィングで反論している。