- 韓国が出生率の急低下に大揺れだ。2022年の合計特殊出生率は0.78で経済協力開発機構(OECD)加盟国において最下位。さらに2025年には0.65まで低下するという。
- このままでは30年後には自治体の半分が消滅するという悲観的な見方も出ている。歴代の韓国政府は少子化対策に躍起だが、成果は出ていない。
- 背景には、結婚そのものに対して嫌悪感を抱く若者が多いことがある。日本は「異次元の少子化対策」でしらけムードが漂うが、韓国はそれ以上に深刻な状況にある。
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
2023年は韓国全土に大激震が走った年だった。その震源は「出生率」。2022年の出生率は0.78で、「このままでは韓国がなくなるのでは」と多くの人が思ったからだ。0.78という数字は、経済協力開発機構(OECD)加盟国で最下位である。
さらに韓国統計庁は12月14日に出生率の推計を発表した。それによると、2023年は0.72となり、2025年には0.65まで低下するという。
今夏以降、報道番組では昼夜を問わず、ことあるごとに出生率低下が招く「韓国消滅」をネタにしている。ちなみに日本の2022年の出生率は1.26で少子化が社会問題になっている。岸田政権は的外れな「異次元の少子化対策」をぶち上げてひんしゅくを買っているが、韓国の出生率は日本を0.5近くも下回る深刻さだ*1。
*1:「大学無償化」だけじゃない、岸田首相の少子化対策が異次元に的外れなワケ(JBpress)
このままでは生産人口の激減を招き、それは時限爆弾のように韓国経済を揺るがす。少子高齢化が進めば経済は縮小する。そのため、経済界でも日韓で協力して少子化を食い止めようという動きがでてきている。経団連と韓国の全国経済人連合会は、両団体が資金を出し合い脱炭素など共通の課題に取り組むことを表明しているが、その中の1つが少子化対策である。
しかし、もはや人口減少を反転させることは容易ではないだろう。経済団体が連携したところで、決定打になりえない。
平井 敏晴(ひらい・としはる)
1969年、栃木県足利市生まれ。金沢大学理学部卒業後、東京都立大学大学院でドイツ文学を研究し、韓国に渡る。専門は、日韓を中心とする東アジアの文化精神史。漢陽女子大学助教授。