釜山万博の誘致に失敗し落ち込む韓国の関係者(写真:AP/アフロ)
  • 韓国の釜山が、2030年の国際博覧会(万博)の誘致に失敗した。サウジアラビアの首都リヤドに対して大差で敗北した。
  • 名実ともに「先進国」の仲間入りをしたことを国内外に示す格好の機会として国を上げて盛り上げてきたが、あまりの大敗に国内には白けムードが漂う。
  • かたや大阪万博は辞退する国が相次ぐなど大混乱中だ。そもそも万博頼みで国力を世界にアピールしようという姿勢がもはや時代遅れであることに気づくべきではないだろうか。

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 2030年の釜山万博誘致に失敗したというニュースが、11月29日の朝、韓国全土を駆け巡った。

 釜山の他にサウジアラビアの首都リヤドとイタリアの首都ローマが立候補していたが、リヤドが優勢と長いこと目されていた。だがその一方で、とりわけ11月に入ってからは釜山が猛追しているとの報道が韓国メディアで相次いだ。

博覧会国際事務局(BIE)総会での誘致合戦で盛り上げる釜山万博の韓国関係者(写真:ロイター/アフロ)

 こうして現地時間の28日午後、フランスのパリ近郊で博覧会国際事務局(BIE)の総会を迎えた。フランスと韓国は8時間の時差がある。韓国における28日夜の報道は、期待に胸を膨らませているかのように大いに盛り上がっていた。

 今回の誘致に対する韓国政府の熱の入れようは相当なものだった。去年にはボーイズグループのBTS(防弾少年団)を釜山万博広報大使に任命し、釜山でBTSの無料コンサートを開催。そこに韓国駐在の外交関係者を招待するなどして、広報に余念がなかった。

人気ボーイズグループ「BTS」を釜山万博の広報大使に任命(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 先月には韓悳洙(ハン・ドクス)国務総理や朴振(パク・チン)外相らをパリに派遣して、投票権のある国々の関係者を夕食に招待するなどして誘致合戦を展開した。さらに23日には尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がパリに乗り込み、釜山への支持を訴えた。そのとき語った「Busan is ready」という言葉は、BIE総会の数日前から韓国の報道で何度も繰り返し引用された。また、日本政府が釜山支持を表明すると、それも直ちに報じられた。

 ところがふたを開けてみたら、実にあっけない幕切れとなった。リヤドが119票、釜山が29票、ローマが17票で、大差でリヤドに敗北した。しかも、あまりの票差に決選投票が行われなかったのも史上初だという*1

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