- 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、ASEAN首脳会議で「韓日中」という表現を使用し、これまでの「韓中日」を変更。中国の扱いを「格下げ」した。
- そもそも韓国社会には「嫌中」感情があったが、中国の経済不安などを背景に中国への依存リスクを指摘する専門家もいる。
- 尹政権が中国より日本への接近を明確にしたことに中国は反発。野党は処理水問題などで中国と歩調を合わせており、人気のない尹政権の先行きには注意が必要だ。
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
韓国の尹錫悦大統領は、中国を格下げした。9月初めにインドネシアのジャカルタで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の席上で、東アジア3カ国の総称としてこれまで慣例であった「韓中日」ではなく、「韓日中」を用いたのだ*1。インドネシアの有力紙コンパスの紙面インタビューでも同じく「韓日中」だった。
*1:尹大統領 「韓中日」でなく「韓日中」と言及=「日本とより緊密に協力」(9月5日付、聯合ニュース)
このことをめぐって、大統領室高官は9月6日、「今の政権に入り、価値と自由の連帯に基づき、米国、日本とより緊密な協力が行われている」と説明した。また、「米国と北朝鮮」の呼び方については、これまでの「北米」ではなく「米北」としているという。
中国の環球時報は同7日付の社説で、韓国は「米国の同盟国のなかでは、他国とは違ってバランス感覚がある」という印象だったが、今回の尹大統領の発言は「韓国およびその周辺国に、疑念と憂慮を引き起こしている」と批判した*2。
*2:社评:尹锡悦说“韩日中”,不仅韩国人听起来怪怪的(9月7日付、環球時報)
「韓日中」という言い方は、今年3月21日の閣議でも見られた。ちょうどそのころは日韓両国の距離が急速に近寄りつつあったため単なるリップサービス程度にみえたし、あくまでも閣議という内輪の場でのことだったので特に気にも留めなかった。
だが今回は違う。国際会議の場で、しかも、中国と緊密な関係にあるラオスやカンボジアの元首たちも参席するASEAN首脳会議の席上で使ったのだから、韓国にとっては「中国よりも日本」というメッセージを本気で発信していることになる。