「ウクライナには今後、武器供与しない」と発言したポーランドのモラヴィエツキ首相(写真:Burzykowski Damian/Newspix/ABACA/共同通信イメージズ)
  • 「ウクライナに対して今後武器供与しない」というポーランドのモラヴィエツキ首相による発言が世界に波紋を起こしている。
  • 大慌てなのが、ポーランドによるドイツ製最新鋭戦車レオパルト2の供与を認めてきたドイツだ。
  • ドイツにとってポーランドによる武器供与は、ロシア、そしてロシアとつながる中国による影響力拡大からドイツを守る「生命線」だからだ。

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相は9月20日、ウクライナに対して「今後武器供与しない」と断言した。ウクライナ戦争でロシアへの反転攻勢が進むなかでのこの発言は、欧米や日本、そして私の住む韓国でも一斉に報じられた。

 世界が驚いたのも無理はない。ポーランドはこれまでウクライナからの避難民を最も多く受け入れてきたうえに、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のなかでいち早く戦闘機を支援するなど、武器供与も積極的に行ってきたからだ。特に注目を集めたのが、ドイツ製の最新鋭戦車レオパルト2の供与である。今年2月、ドイツが直接の供与を渋るなか、ポーランドはドイツから承認を得た上で、自国が所有するこの主力戦車をウクライナに引き渡した。

 この発言の背景には、ポーランドによるウクライナからの農産物輸入禁止をめぐる対立がある。ウクライナのゼレンスキー大統領は9月18日、規制撤廃を求めて世界貿易機関(WTO)に提訴した。今回の発言はその3日後である。

 発言の翌日にはポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は火消しに走った。くだんの発言について「ポーランド軍の近代化のために買っている最新鋭の兵器は送らないと言っただけだ」と述べて軌道修正を図っている。

 だが、欧米の各メディアは両国の関係が冷え込んでいると指摘する。イギリスのBBCはポーランド政界内に漂う「ウクライナ疲れ」を22日付で報じた*1。これまでウクライナへの支援に熱弁を振るってきたポーランド政府が「突如として、ウクライナ政府に政治のナイフを突きつけているように感じる」と、その論調の変化について驚愕をもって報告している。

 アメリカのCNNは輸入規制をめぐる対立で両国政府は「仲たがい状態にある(at loggerheads)」と述べているほか*2、フランスのルモンドは「残念な緊張状態(des tensions regrettables)」と評している*3

 それでも、モラヴィエツキ首相の発言にもっとも驚いたのはドイツであろう。いや、驚いたというよりは、慌てたという方が正確かもしれない。しかも慌てたというのは、恐らくドイツだけなのだ。

 ならば、ドイツはなぜ慌てざるを得なかったのか。

*1ポーランド政界に漂う「ウクライナ疲れ」の影 支援の論調はなぜ変わったのか(9月22日付、BBC日本語版ウェブサイト)
*2Poland will stop providing weapons to Ukraine as dispute over grain imports deepens(9月21日付、CNN)
*3Guerre en Ukraine : Mateusz Morawiecki annonce l’arrêt des livraisons d’armes de la Pologne à l’Ukraine, Andrzej Duda assure que les propos de son premier ministre ont « été interprétés de la pire manière(9月21日付、ルモンド)