K-POPで日本人メンバーによるNiziUも紅白歌合戦に出場した=2023年11月撮影(写真:OSEN/共同通信イメージズ)
  • 第74回NHK紅白歌合戦の視聴率が過去最低となった。性加害問題で旧ジャニーズのタレントが不在となった影響も少なくないと見る向きは多い。
  • 代わりに、紅白歌合戦に「侵攻」してきたかのような印象を与えたのがK-POPだ。このK-POPのグローバル市場を見据えた進化が加速している。
  • BLACKSWANという女性グループではK-POP初の黒人メンバーが注目を集め、韓国出身者はゼロ。旧ジャニーズの性加害問題を契機に、日本の音楽産業はK-POPのようなグローバル目線を手に入れられるか。

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 ジャニー喜多川氏の性加害問題で日本社会に衝撃が走った2023年。大みそかに放送された第74回NHK紅白歌合戦(第2部)の視聴率は31.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区の番組平均世帯視聴率)と過去最低を記録した。その要因として挙げられているのが、ジャニー喜多川氏が率いた旧ジャニーズ事務所に所属していたタレントの出場がなかったことである。

ジャニー喜多川氏(写真:共同通信社)

 旧ジャニーズ事務所には人気男性タレントの多くが所属してきただけに、そこからの選抜ができないとなると、当然ながら紅白歌合戦の視聴率は下がらざるを得ないと見られていたが、その通りとなった。もちろん、テレビ離れといった大きなトレンドもあるだろうが、旧ジャニーズの所属タレントが出場しなかったことは、「過去最低」の視聴率と無関係ではないだろうというのがおおかたの分析だ。なかには辛辣(しんらつ)な論調で「紅白終活説」を展開するメディアもある。

 今回の性加害問題で感じたのは、旧ジャニーズに対する日本の若い女性からの大きな支持だ。留学や研修、あるいはワーキングホリデーなどで韓国に滞在している20~30代の日本人女性に、性加害問題で所属タレントがテレビ出演などを一部制限されていることについて聞いてみると、「タレントには罪はないのに、なぜ活動が制限されるのか納得できない」という回答が多かった。

 2023年の紅白歌合戦がテレビで放送されている間も、SMILE-UP(旧ジャニーズ事務所)に所属する7組のグループが生配信を行っていた。その一つであるSnow Manは20時30分から1時間半にわたりYouTubeで生配信をしたところ、同時接続数が133万を超えて日本記録を打ち立てている。

 だが、この旧ジャニーズタレントの人気は今後も続くのか。舞台がテレビからYouTubeになっただけでは難しいのではないかと思う。K-POPの劇的な進化を見ていると、そう感じざるをえない。

【参考資料】
NHK紅白歌合戦①世帯視聴率(ビデオリサーチ)
紅白歌合戦、旧ジャニーズはゼロだが「意外な歌手」も「斬新な試み」もナシ。もはや新鮮な“やる気のなさ”(週刊SPA)
SMILE-UP. 大みそかに7組が生配信 Snow ManはYoutube同時接続数歴代1位の133万人を記録(中日スポーツ)