日本語の「の」という助詞は、それだけで多くの意味を表すことができるという。『風の谷のナウシカ』は「風の谷に住んでいるナウシカ」で、『天空の城ラピュタ』は「天空にある城ラピュタ」といった具合だ。

「の」だけでさまざまな意味を表現できるため、タイトルが無駄に長くならず、さらに叙情的な雰囲気も生まれている。

曖昧さを排除した言語の行く末は?

 そこかしこに存在する言葉の「曖昧さ」。誤解やすれ違いが起こる要因にもなるが、短く簡潔に情報を伝えられる手段にもなる。何より、さまざまな解釈ができる「曖昧さ」を知れば知るほど「言語」というものの面白さも感じられる。

「おわりに」では、チェコの劇作家で大統領も務めたヴァーツラフ・ハヴェルの戯曲『通達』に登場する人工言語「プティデペ」に触れている。この言語では曖昧さが排除され、「1つの単語に1つの意味」が徹底されている。

 するとどうなるのか?
 
 ぜひ自身の目で確かめてもらいたいが、本書を通して「曖昧さ」の持つ面白さに気づけば、あまり良い結果ではないと予測できるのではないだろうか。