すれ違いを防ぐためにはどうすればいいのだろうか。著者の川添愛氏は、次のように語る。

……「大丈夫です」や「OKです」を単独で使うのはやめて、「ご提案のとおりでOKです」とか「お気遣いいただかなくても大丈夫です」などと言うようにしています。(中略)また、こうすることで、「大丈夫です」「OKです」といったやんわりした言葉の真価が発揮されるような気がします。

「芝居がかった」と書こうとしたら「司馬懿が勝った」に

 人間が相手ではなく、対コンピューターの場合でもすれ違いは起こる。たとえば「同音異義語」。タイピングした文字を漢字変換したときに、思わぬ変換結果がでた経験は誰しもがあることだろう。

「芝居がかった」と書こうとして、「しばいがかった」と入力し、仮名漢字変換をしたところ、思いがけない変換結果が出てきました。それは「司馬懿が勝った」というものです。

 司馬懿とは中国が三国時代にあった頃の魏国の軍師である。「芝居」と「司馬懿」、「がかった(掛かる)」と「が、勝った」が同じ音だったために意図せず起こった漢字変換の違いだ。

曖昧さを逆手に取った「スタジオジブリ」の作品タイトル

 ここまでで挙げた以外にも、本書にはすれ違いの例が多く出てくる。文を「どこで区切るか」で意味が変わる、修飾語がどの名詞に掛かっているのか、否定文や疑問文の曖昧さで解釈が異なる――などなど。読み進めるほどに、日本語とはなんと複雑なものなのかとめまいがしそうになるが、曖昧さを逆手に取って便利に使っているケースも見られる。

 本書では「スタジオジブリ」の作品タイトルも例に挙げられている。