裁判員に選ばれる確率は?

 直近の2023年では、候補者名簿に登録された人は全国で21万3700人でした。有権者の約500人に1人、0.2%です。ただし、対象事件の多い・少ないも含め、地域事情も絡んでくるため、確率にも幅があるようです。人の一生を加味すると、6人に1人が裁判員経験者になるという報告もあります。

 したがって、市民と裁判の距離は間違いなく近くなってきたと言えるでしょう。司法改革の狙いの1つは成功しつつあると言えるかもしれません。

 ただし、裁判員という職務には、かなりの心理的負担もあるようです。法廷では事件の凄惨な現場や犯行の様子も再現されます。理不尽とも思える被告人の主張や被害者・遺族の苦しみを直接、その耳で聞くことにもなります。おまけに、審理の内容は法律で口外を禁じられています。裁判の進行に合わせて日常生活も制約を受けますから、ストレスはたいへんなものでしょう。

 しかし、裁判員に対する裁判所のアンケート結果(2022年)によると、参加して「非常によい経験と感じた」は62.2%、「よい経験と感じた」は34.1%、合わせて95%超がプラスの評価を下していました。また、自由記述欄にも「ニュースなどで見聞きするイメージよりももっと身近に感じ、裁判のみならず社会のことや福祉のことにも意識を広げることができた」「人生に一度あるかないかの機会であり、改めて全ての国民が法の下で社会生活を送っていることを感じられる経験だと思います」「障害のある身でも参加しやすく、公平に裁けることはとても良いことだと思いました」といった感想が並んでいます。

 あなたが裁判員に選ばれる可能性は、十分にあります。日々流れてくる事件のニュースについても「もし自分が裁判員だったら」という目線で接していると、これまでとは違ったものに見えるかもしれません。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。

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