だが、こうした策に従おうとする政権内の一群を無視して、内外のウクライナ過激派・強硬派が自らの焦燥感を抑え切れずに、勝手に半ば自暴自棄的な対ロシア本土攻撃に突き進んでしまったなら、ロシアの報復はウクライナの想定をはるかに超えたものになってしまうかもしれない。

停戦後にプーチンは打つ手とは?

 そのロシアの側では、プーチンも来るべき停戦を見込んで、米欧の状況やウクライナ政権の動向を注視しながら必要な手を打ってくるだろう。

 ロシア流に解釈すれば、アングロ・サクソンの奸計に嵌って、スラブ人同士が殺し合っていること自体が馬鹿げた不自然の極致、ということになる。

 その感覚をプーチンも抱いているはずだから、停戦を早める方向にベクトルを向かせる動機はある。

 そのロシアの出方について、西側では様々な憶測が流れているが、概してロシアは、自分の出方を相手のそれを見ながら決めていく。

 それゆえ、どこで手仕舞いするかはその時の状況次第、ともなる。

 もしウクライナが今以上にロシア本土への攻撃を激化させるなら、ロシアもそれに応じて大規模な報復攻撃を仕掛ける可能性はある。

 それが単発的な攻勢にとどまらず、ウクライナ領を新たに席巻して、西側とウクライナがいったんではあろうと停戦に合意せざるを得なくなる状況を一気に目指す、というシナリオも有り得よう。

 ロシアが考える停戦での最低ラインは、クリミアは当然として、併合済みのドンバス2州と南部2州の行政区全域の確保だろうが、その上でハリキウ・オデーサ両州にまで手を伸ばすかは、ウクライナ側の防戦対応次第となる。

 トランプ政権誕生なら状況がロシアにとって有利な展開に進む可能性もあるが、他律的な要素である以上、プーチンがそれに賭けて動くとは思えない。

 むしろ、トランプの敗北もあり得るとの前提で、ウクライナと同じく米大統領選前を念頭に何等かの決着ができるなら、なのではなかろうか。

 また、彼の大統領5期目就任を機に動くとかのものではあるまい。