確かめる術はないが、10項目和平案を本音で積極的に支持する国は、ウクライナの思惑とは逆に減ってしまった可能性すらあるのかもしれない。
ならばで、ウクライナはスイスを口説いて、同じ趣旨での平和サミットを開催することに何とか同意させた。
だが、スイス大統領・V.アムヘルト゚は「会議が成功すると見込まれる時期が来たならば」という留保条件を付け、事実上この開催の見通しは現状ではまだ立っていない。
批判にも聞こえるゼレンスキーの恨み節
ウクライナ大統領・V.ゼレンスキーは、今回のダボス会議の場で演説の機会も持った。
その趣旨は従来述べてきた点と変わらず、ウクライナがロシアに勝たねば、次には他国がロシアの侵略の犠牲になるだけ、だからウクライナを助けよ、というものだった。
ただ、その思い余ってからなのか、彼は「ロシアへの攻撃を抑制せよ、という西側諸国の要求に従った結果、ウクライナは多くの人的損失を被る結果となった」と、恨み節まがいも口にしてしまう。
聞きようによっては、あたかも責任は西側諸国にある、となる。
だから、今後必要となるウクライナの復興や国家運営への財政支援からは逃げるな、と釘を刺されたように受け止めた向きもいたのではないか。
ウクライナは西側からの援助がなければ、今の戦時体制を継続できない。そのことはウクライナもあからさまに認めている。
他方で、今年の秋口までには目標とする領土奪還を果たしたい。
11月の米大統領選での「もしトラ」(前大統領・D.トランプの返り咲き)を想定するなら、そこでゲームセットになりかねないからだ。
それまでに、ロシア経済やプーチン体制が崩壊してくれるという僥倖はどうにもありそうにない。
となれば、対ウクライナ援助で米議会とEU理事会が、いつどれだけの規模の予算を承認してくれるのか ――戦局の主導権を再び取り戻した上での最終目標達成は、その帰趨次第となる。