昨年に比べてロシア・ウクライナ問題は、10大リスクでの順位を落としている。

 今回の順位でその上位に米国内問題と中東問題が置かれていることは、ロシア・ウクライナ紛争の行方がこれらの2つのリスクに左右される側にあることも示しているかのようだ。

 現在の戦局はウクライナにとって、良くて膠着状態、悪ければ守勢、となる。

 ウクライナ軍総司令官のV.ザルージヌイは「今は積極防衛の時」と述べることで、当面ウクライナ側からは新たな攻勢には出られそうにないことを認めている。

 このまま戦局好転への希望が失われ、ロシアを完全に撃退することは困難だという認識がウクライナ国内でもさらに強まるなら、浮足立つ向きが増え、徴兵忌避は減らず、大統領・V.ゼレンスキーの政権への支持も減退しかねない。

グローバルサウス取り込み失敗

 周りがこうして悲観色に染められてくると、ウクライナ政権はとにもかくにも、欧米からの巨額支援が再始動するまで、何とか戦線を維持して、負けてはいないと叫び続けねばならない。

 だが、途中で一度その熱気が冷めてしまうと、「空気」とか「雰囲気」とかを元に戻すことは、その零からの始めよりも難しくなる。

 ロシア・ウクライナ紛争を再び世界の最重要リスクの地位に押し上げ、ウクライナの勝利を世界に確信させることは容易ではない。

 ウクライナは、自国が主張する領土の完全奪還などを含む10項目和平案を、特にグローバル・サウス諸国に認知させることを狙って、1月にスイスで開催されたダボス会議(WEF=世界経済フォーラム第54回年次総会)に臨んだ。

 成果を期待したのは、スイスと共同議長を務めた第4回ウクライナ和平会議であろう。

 ダボス会議のそこかしこで、世界の「地政学的リスク」への 関心が高まっている。その一つにウクライナ問題を位置付け、80か国以上からの政府高官を集めた会議だった。

 だが、グローバル・サウスのウクライナ陣営への取り込みは今回も成就しなかった。

 期待した中国は前回に続き参加を見送り、準備された共同声明案はインドやブラジルほかの参加国に反対され、承認されずに終わっている。