東京メトロは南北線9000系の一部編成を対象に、従来の6両編成から2両増結して、8両編成化を進めてゆく。2023年12月16日に1編成で営業運転を開始した。これにより、定員は882人から1200人となり、南北線のほか、相互直通運転を行なう東急電鉄目黒線、埼玉高速鉄道の混雑緩和が期待される。
コロナ禍から平時に戻ったことで都市部では通勤ラッシュも復活している。車両の増結はこれまでも全国的に実施されており、混雑緩和イコール輸送力増強で効果的な半面、デメリットもある。
(岸田 法眼:レイルウェイ・ライター)
南北線や関連の路線はコロナ禍まで混雑率が上昇していた
最初に南北線9000系の歴史を振り返ってみよう。
東京メトロ9000系は営団地下鉄時代の1990年に登場。1991年11月29日に南北線駒込―赤羽岩淵間が開業すると4両編成で運転されていたが、1996年3月26日の駒込―四ッ谷間の延伸開業を機に6両編成化した。
当初は南北線の全線開通及び、東京急行電鉄目蒲線(当時)の相互直通運転時に8両編成化の予定だった。このため、全駅のホームは当初から8両編成分を確保。なおかつ、ホームドアも整備した(一部の駅では準備工事にとどめる)。
2000年8月6日、東京急行電鉄(2019年9月2日、「東急」に商号変更後、10月1日に鉄軌道事業を分社化し、「東急電鉄」として再出発。以下、東急)は目蒲線を目黒線と東急多摩川線に分割。新生目黒線は9月26日から南北線及び東京都交通局都営三田線との相互直通運転を開始することになった(2001年3月28日から埼玉高速鉄道との相互直通運転も開始)。
ただ、この時点で8両編成化は見送られ、6両編成での運転に決まった。2018年1月中旬、別件の取材で東急に問い合わせたところ、目黒線の輸送人員などを鑑みて決めたという。このため、目黒線と都営三田線のホームドア設置は6両分のみ施工された。
こうした経緯を踏まえ、ラッシュ時における列車の混雑状況を見てみる。
目黒線は東横線のバイパスとして機能すると、田園都市線の混雑緩和の一環として、2008年3月29日のダイヤ改正で大井町線に急行を新設し、大岡山で目黒線に乗り継ぐ体制をとった。さらに横浜市営地下鉄グリーンラインの開業により、日吉で目黒線に乗り継げるようになった。これらが相まって、混雑率は上昇。上り不動前―目黒間の混雑率はコロナ禍前の2019年度に過去最高の178%を記録した。