『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第2回「めぐりあい」では、成人した紫式部が、恋心を伝えたい人のために和歌や文を代筆する仕事に生きがいを感じていたが、父・為時の耳に入ると激怒されてしまい……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
平安時代の成人の儀式に愚痴が止まらない紫式部
放送第2回「めぐりあい」から、ついに主演の吉高由里子演じる紫式部が登場する。紫式部の本名はわかっておらず、ドラマでは「まひろ」と呼ばれているが、本稿では「紫式部」で統一する。
冒頭から15歳になった紫式部が、成人の儀式で十二単を着た姿で現れる。傍らには、紫式部の父で、岸谷五朗演じる藤原為時の姿もある。
「重い……」
そうこぼす紫式部に対して、紫式部の弟・惟規の乳母いとが「姫様、裳(も)をつけるとは、そういうことなのでございますよ」と説明している。
裳(も)とは、腰から末広がりに垂れた袴に似た着物のことで、十二単を構成する衣服のひとつ。冒頭のシーンにあるように、平安時代では、貴族の女性が成人すると、初めて裳(も)をつける儀式「裳着(もぎ)」が行われた。
男性でいうところの「元服」だ。初めて正装することで、一人前の女性として認められることになる。13~16歳あたりで行われる儀式であり、15歳の紫式部も無事に成人を迎えることとなった。
正装の重さにうんざりする紫式部は、佐々木蔵之介演じる藤原宣孝から「儀式ゆえ、辛抱せい。終わったらすぐに脱げばよい」となだめられても、愚痴が止まらない。
「人はなぜ、こんなにも儀式が好きなのでしょう」
こんな自由奔放な紫式部が、一条天皇の中宮である藤原彰子の女房になるのだから、先が思いやられる。一体、どんな試練が待ち受けているのか。吉高由里子のうんざり顔とともに、平安時代にタイムスリップして貴族社会を体験できるのは、今回の大河ドラマの醍醐味といえそうだ。