平安時代の男性官人の衣装である束帯平安時代の男性官人の衣装である束帯(写真:PIXTA)

『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第3回「謎の男」では、まひろ(紫式部)が自分のせいで誤って捕らえられてしまった道長の身を案ずるも、謹慎中につき、どうすることもできないでいた。そんななか、身分の高い姫君らの勉強会に参加できることに喜ぶまひろだが……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

道長を誤認逮捕した「放免」とは?

 ちょっとした会話のやりとりも聞き逃せないのが、今回の大河ドラマ『光る君へ』の特徴の一つかもしれない。

 今回の放送では、オープニングの後から、話の舞台は藤原兼家の屋敷である東三条邸へ。段田安則演じる藤原兼家が、一段高い所から柄本佑演じる藤原道長に説教をしている。

「お前は右大臣の息子だ。放免なぞ相手にする身分ではない」

 この「放免(ほうめん)」という言葉が聞き取れなかった視聴者もいたのではないだろうか。「放免」とは、今でも「無罪放免」という言葉で使われるとおり、刑期が終わったり、刑を免じられたりした者のこと。平安時代では軽犯罪を犯した放免を、検非違使(けびいし)の直属の下級役人として用いた。

「検非違使」というのは、漢字のとおり「非」法や「違」法を「検」察する官職のこと。平安時代初期、第52代の嵯峨天皇の在位中に創設され、治安維持の役割を担った。

 そんな検非違使の下で働く放免は、市中取り締まりを行う現場の人間ということになる。平安時代に放免は「非人」としてみなされていた。

 そんな背景を踏まえれば、兼家が息子に放った「放免なぞ相手にする身分ではない」という言葉は、もっともだとわかるだろう。道長の家柄を思えば「もっと自覚を持って、しっかりしてくれ」と説教の一つや二つもしたくなるというものである。