『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第1回「約束の月」では、幼き紫式部と藤原道長がふとした巡り合わせで出会い、人生を交錯させる。ある日、紫式部が道長との約束に遅れまいと急いでいると、道長の兄である道兼が乗る馬とぶつかってしまい……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

聡明な紫式部と対照的な弟のキャラに注目

 昨年の大河ドラマ『どうする家康』では、初回から主演の松本潤演じる青年時代の徳川家康が登場。いきなり「桶狭間の合戦」の顛末までを描くという急展開ぶりが話題となった。野村萬斎演じる今川義元が早々と討ち死にして視聴者を驚かせたのは、まだ記憶に新しい。

 それに対して、今年の大河ドラマ『光る君へ』では、初回は紫式部の少女時代のみが描かれた。子役の落井実結子が幼い紫式部、「まひろ」を演じている。主演の吉高由里子演じる紫式部の登場は、第2回へとお預けとなった。

紫式部紫式部(写真:New Picture Library/アフロ)

 しかし、『どうする家康』での今川義元の退場とは比較にならないほどのショッキングな展開が、『光る君へ』の第1回の終了間際に待っており、視聴者は呆気にとられることとなる。

 ここからは重要なネタバレになるので、初回をまだご覧になっていない方は、ご注意いただきたい。その話題に入る前に、主役の紫式部と、キーマンとなる藤原道長の家族について整理しておこう。

 まず、紫式部の父は岸谷五朗演じる藤原為時だ。文章生(もんじょうしょう)出身の学者で、和歌、漢学、漢詩に秀でていたという。今回の放送回では、紫式部が幼少期に父の為時から、文学や漢詩の教育を受けていたことがわかる描写がなされていた。

 中国の史書を代表する名著『史記』を読んでほしい、とねだる紫式部を膝の上に乗せながら、父はこうつぶやくのだった。

「お前がおのこであったらよかったのになあ」

 このセリフは、紫式部が書いた日記とされる『紫式部日記』で、父が「くちをしう、男子にて持たらぬこそ、幸ひなかりけれ」(つくづく残念だ。この子が男子でないとは、なんと私は不運なんだろう……)と嘆いたというエピソードが下敷きになっている。

 このときに、父が残念そうに眺めたのが、紫式部の弟にあたる、高杉真宙演じる藤原惟規(ふじわらののぶのり)だ。紫式部とはタイプが異なる弟の惟規は、どんなふうに物語にからんでくるのか。今後の注目ポイントの一つである。